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「 140文字の物語 」
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掃除当番に当たったから、箒でごみを集めていた。
当番の相方は、あまりやる気がないようだ。
先ほどから椅子に座って、私を眺めている。
「好きだよ」とクラスメイトが言った。
箒で床を掃いていた私の手が止まる。
クラスメイトを見やる。
「一回、言ってみたかったんだ」少年は夏のように笑った。
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僕は夢を見て飛び起きた。
枕元の目覚まし時計を確認すると、まだ起きるのには早い時間だった。
カチコチと規則正しく、目覚まし時計は時を刻む。
僕の横で君の寝息が聞こえてきた。
夢は夜闇に溶けていって、どんな夢を見ていたのか忘れ始めていた。
しばしの眠りに落ちていくように、目を瞑った。
炎天下の中、買い出しに出かけた。
体温と変わらない外気温に眩暈を覚える。
どこかに涼める木陰を探すが、そんなものがない街だった。
すぐ側を通っていった車がアスファルトを切り裂く。
余計に暑さを感じた。
早く買い物をすませて、冷房の利いた我が家に帰りたい、と流れる汗を拭いながら思う。
真夜中のファミレスで友だちと話しこんでいた。
友だちが受けた仕打ちを聞いて、耳を疑った。
私は泣きそうになりながら、自分の両手をぎゅっと握る。
友だちは「もう通り過ぎたことだからさ」と朗らかに笑う。
その表情が痛々しくて、余計に涙を誘う。
駄目だ、目頭が熱くなってきた。
涙が零れる。
「iotuは、大丈夫と自分に言い聞かせながら最後の嘘をつきました。
それは相手の笑顔のための嘘でした。
「欲しい物のは手に入れたから、もういいんだ」、と。
嘘だと言えたら、どんなに。」

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僕は、大丈夫と自分に言い聞かせながら最後の嘘をついた。
それほどまでに、この日がくることに怯えていた。
それは相手の笑顔のための嘘だった。
自分のためではない。
「欲しい物は手に入れたから、もういいんだ」と手に入れる事のできなかった君に対して告げる。
嘘だと言えたら、どんなに。
向日葵のように、ただ一心に見つめ続けていた。
言葉を交わすことはなかった。
時折、視線が交わりあうだけだった。
私にとって特別だから、あなたの特別になりたいと思うようになってしまった。
そんなことを口の端に乗せて言った。
他愛のない世間話をつもりだった。
あなたはそれを、恋といった。
大雨強風だろうと電車が動いている限り、出社の義務があった。
雨戸がガタガタと鳴るほどの嵐の中、あなたは出ていくという。
せめて、と骨が頑丈な傘を玄関口で渡す。
こんなものでは濡れてしまうかもしれないけれど、ないよりはマシだろう。
「行ってらっしゃい」と私は言うと、額にキスされた。
大切にしなければいけない人がいるのに、好きな人ができた罰だろうか。
想いを告げるつもりはなかった。
だたあなたを想って綴った詩を書いていただけだ。
それを君に見つかってDeleteさせられた。
すでに過去のことなのに、時折、思い出したように心の傷が疼く。
きっと寝苦しい夜が悪いのだ。
久しぶりに会った君は、少しだけ大人に近づいていた。
僕の心音はでたらめの行進を始める。
デートコースは愛が好きの二人にとって当たり前の映画からのカフェだった。
君は満面の笑みを浮かべながら、僕の両手のひらに指を絡める。
「これじゃあ、何にもできないよ」と僕は降参しながら言った。
「iotuは、冷静であるよう心がけつつ最後の嘘をつきました。
それはきっと必要じゃない嘘でした。
「世界で一番、大嫌い」、と。
頼むよ、ごまかされてください。」

------

僕は、冷静であるように心がけつつ最後の嘘をついた。
それはきっと必要じゃない嘘だった。
向かい側のソファ席でメニューを見ている君に「世界で一番、大嫌い」と言った。
「エイプリルフールはとっくに終わったよ」と君は僕を見つめた。
頼むよ、どうかごまかされてください、僕の心にある嘘を。
天邪鬼な君が口を開いた。
「嫌い、って言ってよ」と呟くように告げた。
「なんで?僕はこれ以上ないぐらい君のことが好きなのに」と微笑んだ。
「どうして、そんな風に甘やかすの?私は自分が嫌いなのに」と君はうつむく。
「君がどれだけ君自身が嫌いでも、僕は君を好きでい続けるよ」と言う。
テレビから台風情報が流れる。
朝ご飯と弁当の準備をしていた私は手を止める。
アナウンサーが淡々と天気図を出しながら解説をする。
「今日は朝練なさそうね」と私は台所に戻る。
たまにはゆっくりと寝るのも悪くないだろう。
強い雨の中、家を出ていく息子を思って、ほんの少しだけ心配をした。
似たり寄ったりの集合住宅の郵便受けに新聞を入れていく。
朝というよりも夜に近時間帯に、来る日も来る日も新聞を届ける。
晴れの日も、曇りの日も、強風の日も、雨の日も、台風が接近している日も。
規則正しく、新聞を郵便受けに入れていく。
その単純作業に、気が狂う。
いつまで続ければいい。
「冷房利きすぎて、ここの店寒くない?」と君が言った。
暑がりな僕にはちょうどいいぐらいの室温だった。
僕は仕方なく、君の指を握り締める。
冷たいと感じるほど、君の手は冷えきっていた。
これなら確かに寒いだろう。
僕の温もりを分けあうように、君の指先を握ったままでいた。
そんな夏の日。
「iotuは、幼子を慰めるかのように最後の嘘をつきました。
それは自分が傷つくだけの嘘でした。
「幸せなんて、どこにもないんだ」、と。
だってもう、仕方がないだろう?」

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僕は、幼子を慰めるかのように最後の嘘をついた。
君が迷子になってしまったような表情を浮かべていたから。
それは自分が傷つく嘘だった。
最後だと思って言った。
「幸せなんて、どこにもないんだ」と告げると君と視線があった。
縋りつくような目の色に心が痛む。
だってもう、仕方がないだろう?
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