忍者ブログ
「 140文字の物語 」
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

帰宅すると母から「あなた宛ての手紙が来ていたわよ」と言われた。
心当たりは一人しかいない。
母から手紙をひったくるように受け取ると、自分の部屋に戻る。
制服から着替えるのももどかしくて、封を開ける。
整った文字の便箋が出てきた。
近況報告だけしか、書かれていない手紙でがっかりした。
PR
通学路の途中で冴えない風貌の男性と出会った。
馴れ馴れしくしゃべりかけてきた男性は未来から来た僕自身だという。
このままでは不幸な将来が待っているから、運命を変えに来たという。
僕はそれを無視した。
不幸、上等じゃないか。
タイムパラドックスを起こすほど愚かではない。
心から笑う。
公園の木陰に置いてあったベンチに座る。
蝉の鳴き声がいっそ激しくなった。
「こういうのなんて言うんだっけ?」と僕が問えば、涼しい顔をした幼馴染が「蝉時雨じゃない?」と答える。
会話は切れて、僕はぼんやりと公園の姿を眺めていた。
幼馴染が力強く、両手を指先をつつく。
構って欲しいと。
「iotuは、感情を抑えながら最後の嘘をつきました。
それは傷をいやすための嘘でした。
「君にもらったものは全部返す」、と。
本音は仕舞い込んだまま。」

------

僕は、感情を抑えながら最後の嘘をついた。
それは傷をいやすための嘘だった。
君の言葉の刃で、これ以上傷つきたくなかった。
「君にもらったものは全部返す」と言うと、「そっか」と君は微笑んだ。
傷つくだけの恋ではなかった。
それを教えてくれた君に、返したくない。
本音は仕舞い込んだまま。
「お願いがあるんだ」白金色の頭髪の少年から声をかけてきた。
いったい何があったのだろうか。
訝しがりながら「お願いって?」と少女は尋ねた。
「下級生を教える係だろう。この日、交替してほしいんだ。君にしか頼めない」と少年は言った。
立派に係を務めてみせる、と対抗心が湧いてくる。
同胞殺しの妖刀神剣・神楽の刀身はカメラに映らない。
青年の目に見え、確かにふれることができるのに、刀身だけが透明だった。
青年は歌うように律動し始めた刀を睨みつける。
刀身を鞘に納めると立ち上がる。
敵対している同胞が近くに結界を張ったのだろう。
青年ひとりの戦いの始まりだった。
貴方が「手を繋いでくれないのなら、一歩も歩かない」と言い出した。
いつも決まって言うわがままだった。
そんな可愛らしいわがままに「恋人と思われてもいいのですか?」と私は尋ねた。
「今日、一日ぐらいはいい」と貴方が言った。
私は手を差し出した。
貴方は恥ずかしそうに、私の指に触れる。
「iotuは、幼子を慰めるかのように最後の嘘をつきました。
それは自分が楽になるための嘘でした。
「今とても幸せだよ」、と。
本当に、ごめんね。」

------

僕は、幼子を慰めるかのように最後の嘘をついた。
歳よりも幼く見える君が、歳相応だとは知っている。
だから、この嘘も見破られるかもしれない。
それは自分が楽になるための嘘だった。
「今とても幸せだよ」と不幸の中で言った。
「本当に?」君は疑いの眼差しで僕を見上げる。
本当に、ごめんね。
幼馴染は決意を決めたらしい。
ずっと見つめていた相手に告白する、らしい。
答えは分かりきっているのに、諦めきれないらしい。
相手は優しく微笑んで、断った。
幼馴染は未練がましく去っていく様子を見ていた。
僕はそんな幼馴染にハンカチを差し出す。
「なんでここにいるの馬鹿」と怒鳴られた。
帰り道スマホが律動した。
妻からのLINEだろうか。
タップすると『あなたが好きな花瓶を買ってきて』と可愛らしいスタンプと共に、液晶画面に表示された。
駅中の花屋でお勧めの花瓶を買った。
「ただいま」と玄関をくぐると「お帰りなさい」と妻は微笑んでいた。
その手には小さなブーケがあった。
無惨な最期を迎えた兵士の冷たい躯が月光に照らされていた。
その中、動く者があった。
戦場に立つにはまだ幼い少年が泣きながら、墓を掘っていた。
兵士たちはこの国を守ろうと選んだ。
それが自分の生命と等価交換だとしても。
幼い少年にはできることは少なかった。
守られるだけの存在だった。
出会いは戦場。
今ではありきたりな出会いだっただろう。
息絶えた者とまだ微かに生命を繋いでる者の中を少女は歩く。
自分とそう年頃の変わらない少年を見つけた。
夕陽色に染まった体の少年は起き上がる。
少女は嫌々ながら、少年の腕を両手で包む。
少女に与えられた癒しの異能が少年の生を繋ぐ。
「iotuは、特別に優しい声で最後の嘘をつきました。
それは前へ進むための嘘でした。
「欲しい物のは手に入れたから、もういいんだ」、と。
決めたはずの覚悟が、揺れそうだな。」

------

僕は、特別に優しい声で最後の嘘をついた。
それは僕が前へ進むための嘘だった。
「欲しい物は手に入れたから、もういいんだ」と。
今にも泣きそうな顔をした君に嘘をつく。
一番欲しかった君は手に入れられなかったけれども、それも運命だ。
君は目を潤ませる。
決めたはずの覚悟が、揺れそうだな。
私は耳の近くでドンという音を聞いた。
そろそろと顔を上げてみれば、真剣な表情のあなた。
私を閉じこめて「そう簡単には逃がしてやらない」と告げる。
あなたの凛とした顔立ちが近い。
それだけで私は真っ赤になってしまう。
「どんなご用事でしょうか?」と私は尋ねる。
「君を独占したいんだ」
曲がり角すら直角に曲がる真面目なあなたから、告白された。
いつも浮気な恋をしてばかりいる私のどこを好きになってくれたのだろう。
疑問を持ったけれども、嬉しいという感情は変わらない。
「喜んで」と告白をOKすると「軽々しくないか」とお説教を受けた。
「あなたが好きだから」と私は言う。
PREV ← HOME → NEXT
忍者ブログ [PR]
 △ページの先頭へ
Templated by TABLE ENOCH