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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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 二人分の食器でいっぱいになるテーブルに、彼女は百均のキャンドルホルダーを置いた。
 彼女の身じろぎに合わせてシャンプーの香りが鼻をくすぐる。
 蛍光灯の下じゃなくって良かった。
 耳まで熱くなっている、エアコンのスイッチは切ったのはずなのに。
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 南瓜に人参、大根。
 カゴの中は冬至の野菜。
 今から料理して間に合うのか、そんなことを考えていると饂飩と柚子を手にした彼女が戻ってきた。
 「今日は?」僕の質問に
 「ほうとう、かな」妙な間。
 レジに足を向けると背後で叫び声。

 「キャンドルホルダー!」
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恋はどんなもの?

甘い甘い毒のよう。
飲み口の良い味がして、体を蝕んでいく。
それは舌が麻痺するほど甘い毒のよう。
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 今日の空は泣いてるみたい。
 昨夜、満月を見上げる人が多かったせいね。
 自分のものじゃなかったのが悔しくって、今日は隠しちゃったのよ。
 でも月は自分のものになってくれなかった。
 当たり前のことに気がつかなかった。
 だから悲しくなって泣いているの。
 馬鹿みたいな話でしょう。
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 今年最後の満月という感傷的な響きにかきたてられて、コートを掴んで外に出た。
 僕の想像を裏切るように、吐き出した息よりも白い月は、インクを流したような空とのコントラストが眩しかった。
 哀切の余韻すらない夜に、僕は口を閉ざした。
 天上からしんしんと寒さが降ってくる。
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 大切なものについたものであれば、ささやかな瑕疵であっても、それは許せないものだよ
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 空は快晴。月齢14.3。満月かと思う月だった。
「月が綺麗だね」
 と僕が言うと、彼女はうつむいた。
 気を損ねるようなことだったかな、と彼女のつむじを見ていると
「そうだね」
 と返ってきた。
 彼女が胸に抱えていた本のタイトルが目に入る。

 『それから』。

 僕もうつむいた。
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「今年のクリスマスは幸せになれますようにって祈ってもいいかな?」

 誰に

「神様かな? もし、いるんだったら願ってもいいかな」

 いつも平気な顔で我儘を言うのに

「だって、叶わなかったら悲しいじゃないか」

 ねえ、私と一緒にいると不幸せ

「まさか!」

 じゃあ、お願いしなくても平気
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 埃が雪のように積もった部屋のテーブルに載せられた自鳴琴は独りでに鳴り出した。
 閉じこめたきり省みられなかった過去を悼むように、金属の板が弾かれて甲高い音を立てて拍子のずれたメロディを紡ぐ。
 この曲を好きだった人の唇が歌わなくなったように金属板はぷつりっと止まった。
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 過去と同じ現在なんてないけれど、経験が裡に爪を立てながらささやく。
 「大丈夫だ」と。
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 絶望している暇があるなら、立ち上がれ。
 何も考えなくてもいい。
 ただ俺が言う方向へ走り出せ。
 責任ならお前の分まで、後で取ってやる。
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 叫びだした世界は止まらない。
 シナプスが灼ききれるほど加速する。
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 言葉を重ねても、自分の殻にこもっている君の心には届かない。
 言葉は素通り。
 瞳に涙をためた君は「不安なの」と繰り返す。
 君の殻を破って責任を取る度胸のない僕は、今日も同じ言葉を繰り返す。
 何度、言葉を重ねても同じ言葉には同じ言葉しか返ってこないというのに。
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 二人で幸せになる、と約束する。
 私を幸せにしてもらうのでもなく、あなたを幸せにするのでもない。
「二人で幸せ」になる努力をすると誓う。
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 僕らは目に写らないものを見ようとして、見えない代わりに数字を見ている。
 本当に欲しいものはそれではないというのに。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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