無作為に選んだワイシャツを着て家を飛び出した。
完全に遅刻だ。
ふいに視界に飛び込んできたものがあった。
一瞬きしてそれがシャボン玉だということに気がついた。
通勤路にしている公園から飛んできている。
楽しそうだなぁ。
と思ったところで、遅刻していることに思い出した。
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「雪」名前を呼ばれて振り返ると幼なじみの月がいた。
「なぁに?」と問うと
「螺旋階段のぼって空に会いに行こうよ」月は言う。
「そんなことをしたら、また怒られちゃうよ」
「大丈夫」
「月の大丈夫はあてにならない」
「雪の分まで怒られてあげるから、さあ行こう」
手をつながれた。
君が好き。
どれぐらいって訊かれると困っちゃうけど。
そんなことを訊いてくる君が大好きだよ。
君の笑顔が好き。
君の照れた顔が好き。
君のすねた顔が好き。
君の怒っている顔も好きって言ったらまた怒るかなぁ。
君の全部が好きだから壊さないようにそっと抱きしめる。
好きだよ。
とぼとぼと歩く一人ぼっち。
とぼとぼ道の端を歩いて一人ぼっち。
すれ違う人に会釈して、また道を歩く一人ぼっち。
とぼとぼと曲り道、真っ直ぐな道を歩く一人ぼっち。
後ろから人が来て、立ち止まって、挨拶を交わす。
追い抜かれて一人ぼっち。
とぼとぼと自分のペースで歩く一人ぼっち
夜になるとすーっと影は離れていく。
夜闇に紛れて影は歌い、踊り、遊ぶ。
朝日が昇るまでの影たちの祭りは毎夜、静かに始まって静かに終わる。
彼らは音を持たぬのだから当然、歌に声はなく、踊りに物音は立たない。
朝日が昇ればまた静かに主たちの元へと帰る。
私の言葉など届かなくても良いのです。
私が存在した証明などいらないのです。
私がいたということは「私」が知っているのですから、それだけで十分なのです。
あなたが私を知らなくても、私が望んで、それゆえ餓えてしまったことなど知らなくて良いのです。
どうか静かな眠りに。
「幸せはどこにあるの?」と無邪気に君が問う。
答えられずにいると、「ここだよ」と君が抱きついてきた。
どうやら二人の間にあるらしい。
僕の頬が思わずゆるんだ。
確かに幸せはここにあるらしい。
貴方が好きなんじゃない。一人ぼっちじゃないことを確認するために、貴方と一緒にいる。
傷ついた小鳥にかける言葉が見当たらず、無力さに打ちひしがれる。
話し終わったら、そこで糸がぷつりと切れるように、君との関係もぷつりと切れてしまうのではないかと思ってしまう。
だから、僕は終わらない話を続けなければいけないような気がしていた。
夜闇という名の優しい腕(かいな)に抱(いだ)かれて深い闇に緩やかに落ちていく
「寂しいの」と言ったら「寂しかったんだ」と返ってくる。
「泣きたかったの」と言ったら「泣きたかったんだ」と返ってくる。
合わせ鏡のような私と貴方。
でも鏡だから反射しても、ふれあえない。
どれだけ私の気持ちを分かってくれる貴方でも、私を抱きしめることは永遠にできない。
あの日出した答えはベストではなかった。
もっと時間をかけて答えを出すべきだった。
でも二人の間には時間が残されていなかったのも事実だ。
蝋燭が最後まで美しく溶けられないように、僕と君の間もいびつな形で冷たく固まった。
僕は「答え」を見るたびに後悔のため息を一つつく。
言葉は上滑り。
時間を埋める道具に成り下がった。
沈黙が重く、だからいつもより多弁で、それゆえに繰り返される言葉は空しい。
それでも言葉を生み出さなければならない。
言葉はいまだ不自由で、僕らのすべてを表現できなくて、この愛おしいまでの気持ちに名前をつけられなくて、それでも絶やさずに持ち続けていたい。