カーテンを閉める。
薄暗くなった部屋でDVDを収納している棚に向かう。
お目当てのバンドの名前を見つけ、引っ張りだす。
ライブ音源のDVDを再生する。
ヘッドホンをすれば、ライブに行ったかのような興奮と熱狂に包まれる。
近所迷惑になるから叫べないけれど、これはこれで楽しい
昔むかし、あるところに気難しい桜がありました。
豪奢な供物を捧げても、花を咲かせることはありませんでした。
どうやったら桜の開花を見られるのか、村人たちは頭を抱えました。
娘は桜の隣に松を植えました。
桜が独りで寂しそうに見えたからでした。
桜はようやく義理で咲きました。
24時間営業のファミリーレストランも深夜ともなれば、客は少ない。
すぐに禁煙席に通された。
椅子にコートをかける。
温かビーフシチューという文句に惹かれ、オーダーをする。
鉄鍋に入ったシチューはさめるまで食べられそうになかった。
オムライスを食べている彼女が羨ましくなった
慣れない街並みに、旅行に来ているんだなと思った。
あちらこちらにふらふらする彼女にひやひやする。
車通りが少ないとはいえ、心臓に悪い。
そっと、彼女の腕を握る。
大きな瞳がきょとんとこちらを見る。
「今度はあっちを見ようよ!」彼女は笑う。
振り回されることは決定のようだ。
熱で倒れた私を兄弟が交替で看病してくれた。
風邪がうつるから食事を運んでくれるだけで良いよ、と言っても兄弟は汗を拭いてくれたり、額のタオルを変えたりしてくれた。
感謝してもしきれない。
間接痛が始まった。
インフルエンザかもしれない。
看病を断ったが聞き入れられなかった。
ふいに抱きしめられた。
自分とは違う温もりに、吐息を漏れた。
彼の腕の中で安心を覚える。
ガチガチに緊張していたらしい。
「ありがとう」と彼の背に腕を回す。
ステージに立つ勇気が湧いてくる。
「頑張っておいで」と彼は私の背を優しく叩く。
私は独りでステージに向かった。
吹雪吹く中、幼なじみと共に天使になった。
これからは人界へ幸福を届けることが出来るようになった。
見ているだけではなく奇跡を起こせるようになったのだ。
誇らしい気持ちでいっぱいだった。
隣に並ぶ幼なじみも同じ気持ちだろう。
一瞥した横顔は紅潮していた。
これから人界に降りる
人目を避けての訪れ。
二人は恋人同士だったが、それを世間に知られてはいけなかった。
家同士の因縁のせいだった。
愛する人は仇敵の一族だった。
それでも一度灯った恋心は消すことが出来ない。
昼間から堂々と手を繋いで歩きたいと望んでも叶わない。
月の光の中、二人は並んで歩く。
すべての根源たる太陽が姿を消した。
空を仰げども、常闇が続いているだけだった。
月と星の光だけが頼りだった。
いつまで続くか分からない日々に人々は不安になり涙する。
東の空を見ては今日も泣く。
失われて初めてありがたさを人々は知る。
想いが通じたのか東の空が明るくなった。
雨が降りしきる中、娘は輝く剣に身を変じた。
一生に一度きりの変化。
男を守る剣となった。
輝く剣は破壊の限りを尽くした。
魔王の命すら奪った。
男は平和な世界を取り戻した。
けれども娘は輝く剣のまま。
男は愛おしげに刀身を撫でる。
かつて心を寄せた、いや今も愛する娘は傍らに。
炬燵の上には蜜柑だと思って、帰り道スーパーに寄った。
高い。
予算オーバーだ。
それでも炬燵で蜜柑は譲れない。
箱蜜柑を諦めて、ビニール袋に入った物を選ぶ。
お会計を済ます間もニコニコ笑顔だ。
早く家に帰って炬燵で蜜柑を堪能しよう。
それはきっと幸せな気分だ
昼間見るためのDVDを借りに、早朝のレンタルショップに連れ立ってやってきた。
「これなんか、良さそうじゃない?」耳元で彼の声。
耳を囁き声でくすぐられ、思わず距離を取る。
DVDのいパッケージを見ると相合傘をしている男女が微笑んでいた。
軽い恋愛ものだろうか。
私は頷いた
旅行で温泉街にやってきていた。
浴衣を着た女性たちとすれ違う。
非日常感たっぷりなのが良い。
混浴がないのが残念だったが、街中を歩いているだけで眼福だ。
浴衣を着なれていない美少女が覚束ない足取りでやってくる。
それを見られただけで、充分元は取れたような気がしてくる。
身体測定の何が嫌かと言うと、身長を測ることだった。
幼なじみにわずかに届かない身長が数字化されるのが嫌だった。
今年こそは、と臨んでみても幼なじみの方が身長が高い。
毎日、牛乳を飲んでいるし、出来るだけ早く眠るようにしている。
それでも幼なじみには敵わない。
悔しい。