隣国まで内密に運ばなければならない。
靴底はすり減り、足裏には肉刺がつぶれた痕でいっぱいだった。
それでもくじけず書簡を運んだ。
旅ももう少しで終わりだと自己暗示をかける。
隣国の関が見えていた。
他の旅人達に紛れ込んで関を越える。
痛む足を抱えて絢爛豪華な王都を目指す。
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穏やかな雰囲気を壊す地響きがした。
またかと思いながら、昼寝を中断する。
背を伸ばすとポキッと関節が鳴った。
校庭に大きな穴が空いていた。
屋上の手すりを乗り越えて、校庭に着地する。
穴を空けたと思われる少女が刀を構えていた。
「穴開けちゃってごめんなさいは?」
「おのれ」
ゆらゆらと揺れる光は、部屋に静かに入り込んだ。
凍えそうな白の光は月光。
私の影を長く引き伸ばして床に落ちる。
窓を開けるとカーテンが微かに揺れた。
温かい空気は冷たい空気と入れ替わってしまった。
月光にさらされた空気は清浄で、体の中を綺麗にしてくれるようだった。
枯れた木に巻きつけられた発光ダイオードは、まるで花が咲いたかのようだった。
青い花は寒々しいコンクリート群を彩る。
12月になったんだなぁ、と再認識する。
自販機で買ったココアをホッカイロ代わりにベンチに座る。
ここからはイルミネーションが良く見える。
プルタブを開けた。
自分ひとりが蹲れるぐらいが世界だった。
ひとりでいるのは苦痛ではなかった。
誰にも比べられずにすむ。
そんな小さな世界が叩き壊された。
外の風は肌を刺すように冷たかった。
歩くように示された道は硝子の破片が折り重なっていた。
傷つかずにすむ世界はどこにもなくて僕は狼狽えた。
病院の待合室で、ぼーっと名前を呼ばれるのを待っていた。
遠慮がちに、手のひらを指先でつつかれた。
「長いね」と付き添いに来てくれた彼女は言った。
「今日は混んでるからね。そのうち呼ばれるさ」と俺は言った。
「早く呼ばれるといいね」と彼女は言った。
手持無沙汰なのだろう。
そんなつもりじゃなかった。という言葉はただの言い訳にしかならない。
特別だった。
一番だった。
大切だった。
言葉を重ねるほど離れていってしまう。
「さようなら」君が呟く。
未練たらたらの僕はこの期に及んでも言葉を重ねようとしていた。
まだ大丈夫。
別れ話は先延ばしにできる。
約束の日、火星行きの直行便に乗った。
現地ではあいにくの雨らしいが、それも楽しみの一つだ。
ドーム内で降る雨は夜更け過ぎには雪に変わるらしい。
プレゼントを膝に抱えて、窓の外を見る。
星が輝いていた。
月とはどんどん離れていく。
まだ見える地球は青く、美しかった。
朝のプラネタリウムもロマンティックだった。
星空を見上げ星座を探す。
都会では見られないほどの星に圧倒される。
生でこれほどの星空に囲まれてみたい、と思った。
プラネタリウムが終わると現実に引き戻された。
外では落ち葉が舞っていた。
寒さに首をすくめる。
今は見えない星を思う
二人っきりで旅行に来ていた。
昼間は有名な観光地を巡って過ごした。
夜は温泉で有名な旅館を取った。
美味しい海の幸山の幸に舌鼓を打った後、それぞれ湯に浸かった。
部屋の中で見た彼女は白い肌が染まり色香が漂う。
思わず唇を奪って押し倒した。
彼女が無理矢理、俺の腕に爪を立てた
夏休みの夕方まだ暑い中、犬の散歩に出た。
汗をかきながら犬の縄張りを歩いていく。
話し相手が欲しいな、と思っていたら携帯が鳴った。
「今、川沿いを歩いてない?」と電話主は言った。
「え、何で?」と私は驚く。
「超能力。なんて嘘。顔を上げてみ」向こう側から電話主が手を上げる
花弁が川に流れていく。
花弁はどこまで旅していくのだろうか。
彼についていけば良かった。
落花流水のように、寄り添っていけば良かった。
そしたら空を見上げる度に、彼のことを想うことはなかったのに。
今、何をしているのだろう。
私のことをたまには思い出してくれるのだろうか。
雪の上に足跡がポツリポツリと残っている。
縁側まで続いていく。
沓脱石に天鵞絨の小さな靴がちょこんと乗る。
「お見舞いに来たの」椿を持った少女が障子を開ける。
冷たい空気が一瞬、部屋の中を駆け抜ける。
「ありがとう」病人は上体を起こして椿を受け取り、少女の髪を撫でる。
地獄には鷹の紋章の悪の小学校がある。
小学校を通う年齢で地獄に落ちてきた子供たちが通う学校だ。
次の世で善行を積めるように、社会のルールを徹底的に教える。
ただでさえ地獄は過密気味なのに、ここ数年子供地獄行きになることが多い。
小学校のクラスを増やしているところだ。
屋上へと続く螺旋階段を昇る。
フラスコを太陽にかざす。
硝子の中で青色の液体が波打つ。
成功だ!と俺は思った。
液体を飲み干す。
喉を熱い物が下っていく。
試しにジャンプをしてみると、軽く1mを飛び上がった。
マナーモードにしていた携帯が鳴った。
携帯に出て実験の成功を伝える。