昼の陽光を感じながら、畳の上で寝転がっていた。
庭伝いに幼なじみがやってきた。
沓脱石に靴を脱ぐと、縁側に登る。
淡い太陽の光が幼なじみの輪郭をなぞる。
それが眩しくて、一瞬目を眇める。
上体を起こすと幼なじみは、向かい側にちょこんと座る。
「おすそ分け」と蜜柑を並べる。
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こんなに好きなのに別れなきゃいけない。
それが胸を締めつける。
好きだからでは越えられない壁があるということを知った。
まだ私たちは子どもなのだ。
愛を誓い合える大人ではない。
だからここでお別れなのだ。
満面の笑みを浮かべながら、指先で指先をつついた。
赤い糸の存在を信じて
補習で夏休みなのに学校に登校した。
この教科では赤点を取ったのは私一人だったようだ。
先生が資料を取ってくると職員室に戻っていった。
ぼーっとしていると鉛筆が転がってきた。
私は拾い、手渡そうとした。
違和感があった。
ここは私一人しかいない密室な場所なのだ。
幽霊だろうか。
やっと社交界デビューができる歳になった。
真っ白なデビュタントのドレスにさわる。
絹の手ざわりが良かった。
これからは仮面舞踏会にも出られる。
お姉さまたちから聴く社交界は、面白そうだった。
サロンで詩を発表できるのが何より楽しみだった。
文化人同士の交流は面白いに違いない
戦場の無惨さが暁によって照らし出された。
昨日、激戦地だった場所だ。
パーツが不完全な屍が転がっている。
生存者はいないか慎重に歩いていく。
瓦礫の山が崩れた。
敵兵だ。
一瞬で判断して、剣で敵兵の胴を切り裂く。
敵兵は槍で突き刺そうとするがそれを避ける。
生温い返り血を浴びる
引き止めちゃいけないと知っていたから、せめてもと笑顔を作る。
覚えていて欲しいのは笑顔だったから。
そんなわがままも土壇場に来ると崩れさる。
泣き顔で、両手のひらを軽く握る。
彼の手を掴まないように。
指を握りこむ。
涙でぐしゃぐしゃになった顔でさようならを言う。
カレンダーをめくる度に、頬が緩む。
もうすぐクリスマスがやってくる。
恋人と初めて過ごすクリスマス。
どんなプランで過ごすのだろう。
どんな場所でも幸せに違いない。
二人っきりでいられるのだから。
寒さもきっと吹き飛ばされちゃう。
早くクリスマスが来ないかなとカレンダーを見る
深夜の劇場は人がまばらだった。
真ん中の良い席を並んで座る。
ポップコーンを口に運びながら、スクリーンを流れていく光景を見入る。
役者の演技につられ感情移入する。
愛する人の病名を告げられた時は頬を流れる涙を感じた。
かかとを足でつつかれて、現実に引き戻された。
軽々しく、腕をぎゅっと握ってきた。
一瞬振り払おうとしたが、大人げないと思って我慢した。
これが最後なのだからと自分に言い聞かせる。
「今まで、付き合ってくれてありがとう」彼女は泣くのを堪えるような顔をして言った。
そんな顔を見るために、今日を最後にしたわけじゃない。
ダイエットは食事制限と有酸素運動が大切だとテレビが訴えていた。
どんな食事が良いか、紹介している。
私は納得する。
こんな乱れた生活では痩せるものも痩せないわけだと。
いくら運動しても、深夜に食事をしていたら意味がない。
かといって今の仕事では規則正しい生活は無理そうだ。
夜空を眺めていると狭間があることに気がつく。
ほんの一瞬のタイミングでそれはこちらを飲みこもうとする。
狭間に入り込んだら二度と出られない。
この時期、夜空を眺めてぼんやりしている人間が多いから、監視を怠れない。
狭間に引き込もうとする人間を許さない。
今日も監視を続ける
好きな布地に刺繍を施す。
小さくイニシャルに蔦を絡める。
「痛っ」また指に針を刺してしまった。
救急箱から絆創膏を取り出す。
左手に増えていく絆創膏に、我ながら不器用すぎると苦笑をしてしまう。
裾にレースをあしらう段階になった。
細かい作業にぶん投げそうになるけれども続ける
夕方の書店は学生がちらほらいる程度の混雑だった。
もう30分ほどだろうか。
本の虫が本棚を眺め始めて。放っておかれている身にもなって欲しい。
「まだー?」しびれを切らして尋ねる。
「んー、あとちょっと」本の虫は答える。
「ゼリー、1個じゃダメなんだからね」
「わかってるよ」
さりげなく、指先を触れ合わせる。
はしばみ色の瞳が弾かれたかのようにこちらを見る。
反射的に視線を逸らした。
手を握り返された。
「生き残りましょう」よく通る声が言った。
力づけられて振り返る。
戦場とは思えない普段通りの微笑みが待っていた。
それにつられるように笑顔になった
夏休みだから自由な時間が多い。
虚構世界へとログインする。
美少女のアバターに身を転じて、虚構世界を歩き回る。
向こうからフレンドがやってきた。
「マッチングイベントやった?」フレンドが訊ねる。
「そんなイベントあるんだ」
「お知らせに書いてあったよ」フレンドが教えてくれた