いつも通りの朝だった。
よく晴れた日のことだったを記憶している。
それが非日常の始まりだった。
学生鞄を持った姉が消えた。
「行ってきます」が最後の言葉だった。
日付が変わっても帰ってこない姉に両親は捜索願を出した。
申し分のない憧れの姉だった。
いったい何が起こったのだろう
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生まれてきてくれてありがとう。
出会ってくれてありがとう。
君が進む未来に光あれ。
痛みも苦しみもない世界などないけれど、君に幸いあれ。
どんなに言葉を尽くしても足りないぐらいの感謝を。
今、祝いの言葉を束にして君に贈る。
今日という日を迎えたことに幸あらんことを。
日差しが強くなってきて、外出にはサングラスが必需品だった。
掛け時計に目をやる。
約束の時間にはまだ余裕があった。
たまには早めに出るか、と考えスニーカーを履く。
待ち合わせの場所は人だかり。
腕時計を見つめる。
待つことも楽しいと思った。
群衆の中から彼女を見つけ出す。
こんなところで朽ち果ててはいけない。
青年は神剣・神楽を構えなおした。
必ず帰ると少女と約束したのだ。
結界の外、少女は待っているだろう。
だから、勝って帰らなければならない。
妖艶に笑う女性が振りかぶってくる。
それを妖刀の背で受け止める。
ギリギリの攻防に焦る心を静める。
生命は生まれた瞬間から声を上げる。
生きている限り、鼓動を刻む。
それはとても当たり前のことだけれども尊いことだと思う。
死の瞬間まで続く歌声はとても貴重だ。
一人一人が違う音色を奏でてハーモニーになる。
生命の連鎖は続いていく。
今日も声が生まれる。
少女は上履きに履き替えながら溜息をひとつ。
今日は定期テストの結果発表の日だ。
廊下に張り出された紙に祈るように見上げる。
今回は自信がなかった。
せめて上位に名前が載っていますように、と思う。
白金色の頭髪の少年の名前の次に少女の名前はあった。
次回こそ逆転したいと思った
いつもの帰り道。
他愛のない話を語り合った。
離れ離れになると知っていたら、想いを伝えたかった。
今になっては過去の話。
それでも何度でも考えてしまう。
あの時、あの場所で、違う台詞を言えたのなら、二人の関係は変わっていたのだろうか。
それとも今と変わらなかったのだろうか。
メロディが流れる。
反射的に掛け時計を見る。
長針が0時のところで止まっていた。
唇を噛む。
冷めていくばかりの料理に視線を戻す。
鳴らない携帯電話を開く。
メールも着信もない。
あと一時間もすれば明日がやってきてしまう。
今日でなければ意味がないのに。
思わず泣き出しそうになる
夜の廊下はいかにも何か出そうな気がしていた。
音がなく、足音だけしか聞こえないのが、より恐怖をあおった。
だから少女がトイレに行く時は必ず付き合わされたものだった。
目を逸らしつつ、指先にしがみつく少女の先導に立った。
懐かしい記憶だった。
幼いながら頼られて嬉しかった。
夕方、花屋で一輪のカーネーションを買った。
駅前のケーキ屋さんでショートケーキを買った。
直接渡すのが恥ずかしかったから、ダイニングテーブルに置いた。
日付が変わる前に帰ってくるとテーブルの上には手紙があった。
プレゼントを喜んでもらえたようだ。
疲れが吹き飛んだ。
孤高の狼を気取ったわけじゃない。
みんなと一緒だということが嫌だったのだ。
自分という個がなくなってしまうような気がした。
お手手つないで横並びになるのが不快だった。
当然、教師に目をつけられた。
協調性の大切さを説かれた。
クラスに馴染まない自分に周囲は途惑ったようだった
雨と汗でレインコートが肌に張りつく。
ビニール製のそれは値段相応の役目しか果たしていなかった。
靴もびしょぬれで雨が入り込んでいる。
歩くたびに水が抜け出す。
傘をさせないのが不便だった。
髪が強風にあおられる。
脱げかかっているそれらを不快に思いながら、家路を急ぐ。
彼がずっと携帯電話をいじっている。
二人で食事しているのに、彼は携帯電話に夢中だ。
せっかくの食事も味がしない。
ようやく二人で過ごせる休日だというのに、気分は最悪だ。
いっそ携帯電話を取り上げてしまおうか。
そんなことを思ってしまう。
ぬるくなってきた水を口に運ぶ。
新品の制服に袖を通す。鏡の前でスマイル。
くるっとターンをすればスカートが広がる。
今日の自分も可愛い。そんな暗示を前でかける。
真新しいものは何でも素敵だ。
学生鞄を持つと台所に降りる。
美味しそうな匂いが鼻をくすぐる。
胃がきゅるりと鳴った。
今日も良い一日になりそうだ。
娘の仕草にハッとした。
亡き妻と同じような所作をしたからだ。
最愛の妻が亡くなってもう5年。
いまだに妻がいないことに慣れない。
名前を呼んだらひょっこりと現れそうな気がする。
年々、妻に似てくる娘がいるせいだろうか。
心の中に開いた隙間を埋めるように娘は今日もよく笑う。