言葉は言霊になって結晶化する。
結晶化した言霊は、伝えたい相手の心に直接届く。
だから言霊使いは慎重に言葉を選ぶ。
それ故、寡黙になりがちだった。
万が一にも悪い言霊が伝わってしまったら大惨事だ。
大切な想いが輝きながら、心の中で溶けていく。
無駄なことを言わないように誓う
私と彼の間に沈黙が落ちた。
言い訳なんて聞きたくなかった。
だからといって押し黙られるのは困ったものだ。
昨日、何をしていたのか聞きたかっただけなのに。
二人が付き合った記念日にどんなことをしていたのか。
忘れ去られたという事実を理解したくなかった。
今は重い沈黙に耐え難い
黎明の中で文字を追いかけていた。
正確には本を読んでいたら黎明を迎えてしまった。
昔はここまで本に夢中になることはなかったから不思議だ。
生活のリズムを変えるまでして何かに夢中になることはなかった。
それが今では寸暇を惜しんで本を読んでいる。
未来は分からないものだと思う
最初は波打ち際を歩いているだけだった。
その足が波にすくわれるような場所まで、少女は歩を進めていた。
このままでは海に帰ってしまうように思えた。
濡れるのもかまわず、少年は駆け寄った。
力強く、少女の腕に触れる。
海とは正反対な凪いだ瞳が抗議するように少年を見た。
思い出はいつでも優しい。
どんな時にも少年が傍らに寄り添ってくれていた。
孤独を感じる暇もなかった。
昨日も、一昨日も、ずっと一緒だった。
それがたまらなく嬉しく感じるのだ。
悲しい時も苦しい時も、かわらず傍にいてくれた。
振り返ってみれば、たくさんの思い出ができていた。
それは穏やか過ぎた。
だんだん距離が開いていって、気がつけばいないのが当たり前になっていた。
傷つけるだけ傷ついてきたそれまでとは違った。
もう恋人同士と呼ぶことはできないのが残念だった。
いつまでもアドレス帳に残る番号を消せずにいる。
次がないことは分かっているのに。
一人暮らしを始めて、独り言が増えた。
今までは話す相手がいたから、会話に困ることはなかった。
けれども今はコンビニで言葉を交わすぐらいで、言葉を忘れてしまいそうだった。
孤独に耐えかねて携帯電話を鳴らした。
懐かしい声がして安堵した。
変わらない日常が彩られた様な気がした
手紙が届いたら、そのままにしておいて。
あなたへの気持ちがあふれすぎて形になったものだから。
読んで欲しくて書いたんじゃない。
止まることのない心が駆け出したものだから。
あなたに手紙が届いたという事実だけでもう充分なの。
だからお願い。
開封しないで、そのままにしておいて
夢見たことが結晶化する。
色とりどりのそれは闇市で売られる。
罪を重ねる者の結晶は高値で引き取られる。
罪悪感が強ければなおのこと。
結晶は美しく光輝くのだ。
それは夢と現実の合間で売買される。
今日は滅多に手に入らない上物が、オークションにかけられた。
持ち主が知らぬ間に。
ずっと一緒だと思っていた。
それなのに少年は少女から離れていこうとしていた。
お別れの日がやってきた。
泣き顔で、少年の指を握り締める。
言葉の代わりに手をつないだ。
それから時が流れて、再び出会うことが出来た。
今度は離れ離れにならなくてもいい。
子供時代を懐かしいと言える
振られるのは分かっていた。
好きになった人にはすでに大切な彼女がいたから。
それでも告白したのは、自分の中で区切りをつけたかったから。
胸に秘めたまま友達でいる選択肢もあった。
けれども想いは重すぎた。
日に日に肥大する恋心に耐えられなかった。
振られてスッキリとした気分だ
その人は私のどんな我儘も叶えてくれた。
欲しい物は何でもプレゼントしてくれた。
突然、会いたくなってメールをすれば、どんな時間でも飛んできてくれた。
けれどもひとつだけ叶うことのない願いがあった。
その人の恋人にだけにはなれなかった。
それだけが決して叶わない願いだった。
しなやかな黒髪の美しさを知らずに、どうして染めるのだろう。
幼なじみの髪色を見て、そう思った。
「これぐらいみんなしてるし」と幼なじみは切りたての髪に触れながら唇を尖らせる。
赤みの強い茶髪に染めてきたばかりの髪は、大人しめな色合いだったけれども昔の黒髪が懐かしかった
クリスマスの贈り物に、街を一人で歩く。
どんな物を贈れば喜んでもらえるのだろうか。
想像するだけでも楽しかった。
街はイルミネーションに彩られて綺麗だった。
小さな雑貨屋さんに入り、写真立てを買った。
「贈り物ですか?」と店員さんに問われ、思わず照れる。
無言で首を縦に振る