彼女に責任があるとしたら、美しい容姿を持っていることだろう。
傾国と言われれば納得できるほど、不幸にも美しかった。
男たちは砂糖にたかる蟻のように彼女の周りに集まった。
彼女の内面を見ようともしなかった。
彼女がどれほど努力しても、その美しさを褒めたたえるだけだった。
一緒に食事中なのに、テーブルの上に置かれた携帯電話。
時折、鳴動する。
すると携帯電話をいじりだす君。
僕よりも携帯電話をしてきた他人の方が大事なのか。
そんなことを思ってしまう。
ほんの少しの、嫉妬を食後のコーヒーに溶かす。
目の前に君がいるのだから、充分だと思わなければ
いつでも後回しにされる。
彼の中で私の優先順位は低い。
それが分かっているから、悲しい。
何のために付き合っているのだろう。
ブランド物のバッグを持ち歩くのと一緒だろうか。
「疲れているんだ」が口癖の彼。
わがままを言いそうになって、そっと両手を握り締める。
私は口を閉ざした
友達以上恋人未満。
宙ぶらりんの二人の関係。
嫌われていないことは分かっている。
けれども二人の間にある絆は恋なのだろうか。
ある日、横からかっさわれてしまうのではないか。
そんな恐怖を感じる。
もう黙っていることに疲れてしまったんだ。
「好きだ」と伝えたら表情が凍った。
青年は煌々と照る月を見ながら、神剣・神楽を握っていた。
自分で選んだ道ながら、決心が揺らぎそうになる。
最近、終わりないのない戦いに迷いが生じることがある。
少女を守りたいと思う反面、同胞殺しを続けることに意味を見出せなくなっていた。
早くピリオドを打ちたいと思うのだ。
わざと遠回りした帰り道。
君といつまでも一緒にいたかったから。
手すらつなげずに並んで歩いた。
君にとって僕はどんな存在なんだろう。
ふいに落ちた沈黙の中、考えてしまう。
足音を聞きながら緊張でドキドキした。
君の家の前で言葉をかけようとして、何も思い浮かばず黙ってしまう。
花よりも団子。とは、よく言ったものだ。
花見に来たはずの少女の両手は食べ物で埋まっている。
屋台を制覇しそうな勢いで食べている。
空は曇で、いまいちパッとしない天気だった。
けれども楽しそうな少女を見ていると、これはこれで良かったのかもしれないと思えてくるのが不思
議だ。
光の速さで想いを伝えることができる時代になった。
けれどもその分、伝える想いが軽くなったような気がする。
落ち込む君に、電話やメールだけでは足りない。
隣に座って慰めたいと思った。
文面だけでは限界がある。
涙をこらえているのかもしれない。
光の速度では分からない。
二人きりで出かけるのは、初めてだった。
途切れがちになる会話を一生懸命に繋ぐ。
ドキドキしてまともに顔を見れない。
手と手がふれそうでふれない距離。
あっという間に時は過ぎ別れの時間になった。
勇気を振り絞って手を伸ばす。
ぎこちなく、指をぎゅっと握る。
振り払われなかった。
目を覚ましたら隣にあった気配はなかった。
冷たくなったシーツをなぞる。
寝顔を見たいと思うのは贅沢なのだろうか。
いつでもそうだ。一歩、出遅れる。
掛け布団を顔まで引き上げる。
薄暗い部屋の中で独りぼっちだ。
とろとろした眠気がやってくる。
アラームが鳴るまで目を閉じていよう
僕の婚約者は花の名前の少女だと聞いた。
会える日をとても楽しみにしていた。
顔合わせのパーティーが開かれた。
初めて会った婚約者は椿の着物が良く似合う美人だった。
笑ったら綺麗なんだろうな、と思った。
固い表情の少女は「椿と申します」と頭を下げた。
笑顔を見るのは難しそうだ
彼女と見た夢の欠片が今も胸をキリリと刺す。
喉に刺さった魚の骨のように、厄介だった。
もう見ることはない夢だから、ふと脳裏に過ぎると微苦笑をする。
想い出にするにはまだ時間がかかりそうだった。
離れ離れになった彼女は今も幸福だろうか。
思い返しては想う。
彼女の目に映るのは僕だけで充分だ。
彼女の声を聴くのは僕だけで充分だ。
誰もいない場所に彼女を連れ出して閉じ込めてしまいたい。
そうすれば彼女を僕だけのものにしておける。
なんて物騒な願い事だろう。
どこまでも自由な彼女が好きになったというのに。
正反対のことを願ってしまう
いつの間にか二人でいることが当然になっていた。
何をするのでも一緒。
どこへ行くのも一緒。
空気のように自然にあるものだと思いこんでいた。
だから、独りきりにされると、とても寂しい。
生木を裂くように、心がずきずきと痛む。
早く二人ぼっちになりたい。
いつものように手を繋いで