どんな喧嘩をしても、次の日は仲直り。
そんな二人が不思議だった。
自分も同じ立場になってみても、分からなかった。
だから訊いてみた。
親友は笑いながら言う。
「怒っている時間が無駄でしょ。ずっと一緒にいたい人だから」
そんなものだろうか。
いつか自然に許せる日が来るのだろうか
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神剣・神楽を押しつけた。
その日から青年の日常を奪ってしまった。
自分の選択は誤ったと思えない。
傷だらけで帰ってくる青年を見つめられず、少女は俯く。
何もできない自分が歯がゆかった。
だから、せめて戦いが終わるまで結界の外で待ち続けると決めたのだ。
精一杯の誠意だった。
今年は春が来るのが遅い。
桜の花の蕾も固く、朝晩の冷え込みもきつい。
少年は待ち合わせの場所で、手をこすり合わせていた。
時間ぴったりに少女が走ってきた。
「転んだらどうする。もっと慎重に」と挨拶よりも小言が出てしまう。
少女は軽々しく、指先を軽く握る。
「冷たいね」と言う
代わり映えはないけれども、安定した毎日が続いていた。
明日は今日と同じ顔をして待っているものだと思っていた。
けれども、少女と出会い、神剣・神楽を振るうようになって普通から逸脱し始めた。
退屈だった日常は一変した。
また明日と約束ができない日々がやってきた。
それが辛い。
二人の間にあった赤い糸。
絡んだ糸は解けてしまった。
繋がっていたはずなのに、切れてしまった。
どれだけ手繰り寄せても、赤い糸は途切れてしまっている。
気がつくのが遅かったのが悪いのか。
それともこれも運命の一つだったのか。
分からないまま中途半端に伸びた赤い糸を見る。
「幸せになりたい」少女は口癖のように言う。
それを聞いて、何もできない少年は頭を垂れる。
大切な少女だからこそ力になりたいと思う。
けれども、現実は残酷だ。
無力な自分を思い知らされるだけだった。
少女をこれ以上ないぐらいに『幸せ』にしたいのに、思いはこんがるだけだった。
一緒にいるのが当たり前だった。
彼女が離れていくことが信じられなかった。
自分以外の誰かと仲良く歩いている姿を見ても、なお信じられなかった。
いつの間にか二人の間に距離が開いていた。
愛の言葉の一つでも、ささやけば違った未来が待っていたのだろうか。
今になっては分からない
明日のことを考えると鼓動が早くなって眠れない。
何度目かの寝返りを打って、眠ることを諦めた。
カーテンを開ければ夜空を渡る月が冴え冴えと輝いていた。
早く朝が来ればいいのに、と思った。
昼過ぎには彼と久しぶりの再会を果たしているだろう。
時間はじれったいぐらい進まない。
「キスして」と少女はストレートに言った。
青年は困ったように微笑んだ。
「じゃあ、目を閉じて」青年の言葉に少女は瞼を伏せた。
額に軽い感触が一瞬して、すぐ離れた。
目を開ければ青年の顔が間近にあった。
「唇にして」少女は再度、懇願した。
「マイスイートハート。まだ早いよ」
まるで覚めた夢の続きを見ているような気分だった。
ずっと昔から一緒にいたようなそんな気がしていた。
それぐらい自然に二人の時間が流れていく。
幸福というのはこんな気持ちを指すのだろうか。
できることなら、これからの季節も二人で過ごせればいいと思った。
それこそ夢のように。
桜の蕾もほぐれるような季節だった。
二人の出会いを祝福するような時が、また巡ってきた。
いつもの帰り道、何か言いたげな彼に言葉を待つ。
改札口で彼は小箱を差し出した。
中には指輪が入っていた。
驚きと喜びで涙が出た。
「もう離れたくないんだ」と彼は言う。
手の甲で涙を拭う。
同僚とはよく休日の希望がぶつかる。
社内ではオタクなのを隠しているが彼女もお仲間なのだろうか。
不意に浮かんだ疑問に首を振る。
社交的で明るい彼女が同人誌を抱えている姿は不釣合いだった。
ただの偶然だろう。
コミュが高い彼女には似合わない。
たまたま休みが被っただけだろう。
これで終わりなのだろうか。
拍子抜けするほどあっけない最後だった。
別れの季節は巡る。
もう二度と会えないだろう。
目に焼きつけておこうと見つめる。
涙は飲みこむ。
満面の笑みを浮かべながら、自分の手のひらを握り締める。
引き止めてしまわないように。
美しい想い出に換わるように
ただ時が落ちていく音を右耳で聞いていた。
さらさらと硝子の中を流れ落ちていく砂を見つめているようだった。
息を吐いて、息を胸いっぱいまで吸って。
生きている。
それを確認するようだった。
横たわっていると境界が曖昧になる。
静かに流れる時に身を任せ、そっと手を伸ばした。
僕の想いが伝わることなんて、これぽっちもない。
君にとって僕は都合の良い友だち。
異性として意識されることはない。
ただの良い人。
そんな関係を壊したくて僕は想いを伝えた。
ずいぶん前から知ってたよ、君の答えは。
君の視線の行く先が僕じゃないことも。
それでも知って欲しかった