穏やかな昼下がり。
気持ちの良いお天気で、二人揃って睡魔に身をゆだねた。
夢の続きのような現実に目が覚めた。
起こさないように、そっと寝返りを打つ。
彼の眠りは深いようだった。
どんな夢を見ているのだろう。
微かに笑みを浮かべている。
彼の夢の中に入っていければいいのにと思う
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どんな人の胸にも種が宿っている。
いつかそれぞれの花が咲くように。
小さな花、大きな花。香りが漂う花。凛とした花。
一つも同じ花はない。
時期が来れば種は咲き誇る花になる。
それまで、たくさんの愛という名の太陽の光を浴び、水を受け取る。
花を咲かせるため
こんなにも愛しているのに、愛の言葉が思い浮かばない。
口に出るのはひねくれた言葉ばかり。
それじゃあ、僕の気持ちが君に伝えありっこない。
分かっているのに、素直な言葉が出てこない。
君を傷つける言葉ばかりが、出てくる。
いっそのこと、口をつぐんだ方がいいのかもしれない。
今日は花火大会。
普段は袖を通さない浴衣を着付けてもらった。
いつもと違う装いに違和感を覚えた。
着付けてくれた母は喜んでいた。
だから、嬉しい振りをした。
会場までの道は混んでいて、その人だかりにすでに気が滅入りそうだった。
汗で浴衣が皮膚に張りついて、気持ち悪かった。
君が悲しくなった時、それを受け止められる僕でいたい。
君が涙の海で溺れそう時、手を差し伸べられる存在でいたい。
君の悲しみは君だけのものかもしれないけれど。
分かち合えることができるようになりたい。
いつでも、どこにいても、僕を忘れないで。
きっと君の元へ駆けつけるから。
カラン。
恋が終わる音のように、切なく鳴った。
水滴のついたグラスの中の氷が溶けた。
二人の間にあるのは沈黙だった。
以前ならば、気にならなかった無言も今は重い。
長すぎた春が終わるのを気がつきたくはなかった。
終わりの言葉を切り出せずにいるのを分かっていて知らん振りした。
パズルのピースを探すように、欠けた愛を探している。
こちらが思うほど思い返してはくれない。
愛しすぎているのは分かっている。
いつでも愛情に飢えていた。
孤独を埋めてくれるように、愛されたいと願っている。
それが相手の重荷になっていることも分かっている。
それでも止まらない
日差しが強く、肌を灼く。
汗がにじんで、肌に服が張りつく。
からからに渇いた喉に、意識まで朦朧としてきた。
このままでは倒れる。
自動販売機から水を購入して、辺りを見渡すとこんじまりとした公園があった。
木陰にあったベンチに座り、買ったばかりの水を飲む。
ほっと一息をつく。
些細なことで彼と衝突した。
悪いのは私の方だと分かっている。
けれども、口から出た言葉が止まらなかった。
会いたくても会えなくなるなんて思ってもみなかった。
後の祭りだった。
既読の着かないLINEに謝ることすらできないのかと思うと辛い気分になった。
彼に優しさに甘えていた
最後のデートは浜辺だった。
泳ぐのも適切ではない時期だったから、人もまばらだった。
沈みゆく太陽が二人のこれからを暗示するようだった。
季節は巡り、あの浜辺に独り立つ。
海に沈めたあの日の思いが蘇ってきた。
本当はいつまでも一緒にいたかった。
それを素直に口にできなかった。
扇風機が回る音だけが部屋に響いていた。
青年は神剣・神楽を向き合っていた。
同胞殺しの妖刀は鞘の中で、大人しくしていた。
夜更けには神剣。神楽を持って、街に出なくてはならない。
お誘いの手紙が届いたのだ。
零れ落ちそうになるためいきを喉で殺し、青年はヘアゴムで髪を結んだ。
ショッピングモールは冷房が効きすぎて寒いぐらいだった。
休日にランチを食べながら、ウィンドウショッピングを楽しもうというデートだった。
夏休みに入ったせいか家族連れが多い。
先に進んでいく彼とはぐれそうになる。
小走りで近づいてそっと、腕を握る。
「ごめん」と彼が謝った。
少年は暁を閉じ込めた水晶の輪郭を優しくなぞる。
これならあの子も気に入ってくれるだろうか。
そんな期待をしながら、小袋に入れる。
半透明の小袋の中で水晶は煌いていた。
少年は大切にカバンにしまうと、玄関のドアを開く。
鍵をかけて少女の家に急ぐ。
少女はどんな顔をするのだろう
泣いてしまえるのいっそ、この腕の中で泣いてほしい。
泣くのをこらえて唇を噛む姿を見て思った。
「泣いても良いよ」と僕が言っても、君は僕の前では泣かないんだろうな。
だから細い腕を引っ張って抱きしめた。
少しでも君の悲しみが癒えれば良いのにと思いながら。
柔らかな髪を撫でた
神剣・神楽を手にした時から、自由というものがなくなった。
常に気を張っている。
同胞殺しの妖刀は、青年を戦場へと駆り立てる。
気ままな独り暮らしだったのが、少女と出会い一変した。
けれども後悔はしていない。
少女ごと世界の平穏を守ると決めたから。
青年は今日も髪を結ぶ。