敵【同胞】との戦いは圧倒的に夜が多い。
それに早朝が続く。
連戦となれば寝不足にもなるものだ。
神剣・神楽はそんな主の気持ちを知らずに、殺し合いを愉しんでいる。
寝ぼけ眼で中途半端に伸びた髪をヘアゴムで結ぶ。
まだ夜の領分に青年は家を後にした。
神剣・神楽の鞘を握り締める。
勝気な少女の双眸に陰が落ちる。
ここは結果こそがすべての世界だ。
どんなに努力しても結果がついてこなければ意味がない。
廊下に貼り出された順位表の2番目に名前があった。
誇れる成績だとは思えない。
この学園に入学してから1番目に名前があったことはない。
少女は眦を拭った。
首筋に貼られた絆創膏。
「虫に刺されただけだよ」と笑う彼女。
街路樹が葉を落とす頃に、虫に刺されることなんてあるのだろうか。
絆創膏の下にはキスマークが潜んでいるのではないだろうか。
自分以外の誰かがつけた所有の証。
臆病だから「絆創膏を剥がしてみてよ」とは言えなかった。
水面に花びらが浮かんでいた。
小さな花びらは微かな風にも揺れる。
今にも沈んでしまいそうな危うさがあった。
少年は花びらを拾い上げる。
水滴が少年の指先を濡らした。
撫でるように滴るそれを少年は手巾で拭き取る。
花びらから優しく水気を拭うと、読み止しの本に挟みこんだ。
今日も一日が終わろうとしていた。
空は染まり、少年と少女を照らす。
夕焼け空を瞳に写しながら、家までの道を歩く。
心地良い風が吹き、雲を流していく。
陽が沈むまであとわずか。
曖昧な時間の中、少年と少女は黙りっきり。
お互いの足音に耳を澄ましている。
永遠を感じる時間だった。
夜、眠る前に思うことがある。
どうか、明日が今日の続きでありますようにと。
大好きなあの人と一緒にいられる未来でありますようにと。
神様というものがいるなら、それに願いを呟く。
明日のことなんて分からないから、少しだけ不安になる。
目を瞑るのが怖い。
先ほどから少女は迂回をしてばかりいる。
近道を避けて、あえて遠回りの道を選んでいる。
舗装された道を歩きながら、少年は首をひねる。
やがてゴールにたどり着く。
少女の家が見えた。
「また、明日ね」がっかりした表情の少女に少年は気がつく。
一秒でも長く一緒にいたかったのだと。
少女は眼前に広がる景色に気をとられている。
青年はそれを優しい目で見守っていた。
海に来るのは、もう何度目か。
せがまれたわけじゃないけれど、青年は少女を海に連れてきた。
ふいに風が吹き、少女の長い髪をさらっていった。
飛んでいく帽子を青年はキャッチする。
少女は笑った。
にやにやした顔で上司が私のデスクに近づいてきた。
悪い予感しかしなかった。
「何ですか?」とりあえず尋ねるだけ尋ねてみる。
「今日このあと用事があるかな?」上司が言う。
予感は的中。
仕事が追加された。
今日は定時に帰れると思っていたのに。
上司の顔を殴ったら気持ち良いだろう
飲んでいた珈琲カップをテーブルの上に置く。
それが合図。
彼女の口唇を盗む。
掠めるようにわずかなそれは珈琲の香りがした。
彼女の顔を見ると、赤面していた。
初めてのキスではないけれど、いつまでも初々しい反応に嬉しくなる。
もっと味わいたくなる。
でもそれはこれからの楽しみ。
君にふれる度に、鼓動が早くなる。
仲良くなってずいぶん経つけど、いまだに君の仕草にドキリッとする。
キスをする時、抱きしめる時、その一つ一つにドキドキする。
心臓が早鐘を打つことを君は知らないだろう。
打ち明けたら君は笑うかな。
それもいいかなと思うぐらい君に夢中なんだ
昼のレストランは家族連れでにぎわっていた。
そんな中、彼と私の間には沈黙が漂っていた。
運ばれてきたスープも手つかずで冷めていく。
まるで私たちの関係を暗示するように。
想い出がたくさん詰まったレストランだった。
初めて訪れた日も覚えている。
時間は残酷だ。
沈黙が傷つける。
それを君が望むのならそれでいいよ。
共に過ごした時間は僕だけのものだから。
いつの日か振り返ってくれれば、僕の心は満たされるんだ。
でも、ちょっと寂しいな。
君が隣にいなくなるって。
いつになったら慣れることができるんだろう。
きっと想い出に代わる日が来ることを知っているよ
二十歳の誕生日を迎えた。
これで煙草も飲酒も合法になった。
コンビニで煙草を買い、居酒屋へと向かう。
一足早く成人した友人と共に、居酒屋の敷居をまたぐ。
年齢確認に免許証を見せる。
喫煙席に座り、さっそく煙草を開ける。
火をつけるのに手間取ってしまったが、大人の仲間入りだ。