贈り物は何がいいだろう。
一抱えもするぬいぐるみ?
蕩けるほど甘いチョコレート?
どこにでも持っていける鞄?
足を綺麗に見せてくれるハイヒール?
爪を鮮やかに彩るマニキュア?
白い肌を輝かせるペンダント?
君に似合うものはたくさんあるけど、花がいい。
色とりどりの花束ではなく一輪だけ。
待ち合わせ場所で困り気味の君を見つけた。
どうやらナンパされているようだった。
真面目な君は軽薄な野郎に断りの文句をぶつけることができないようだった。
僕は急ぎ足で君の元へ向かう。
ナンパ野郎の前で君の肩を抱く。
君はホッとした顔をした。
「恋人ですけど、なにか?」僕は言い放った。
手を繋ぐだけでは満足できなくなっていた。
何も知らない君をヒイラギの下に立たせた。
不思議そうに見上げる瞳を無視をした。
掠めとるように君にキスをした。
出来心だと言い訳はできない。
でも無防備な君も悪いんだよ。
君は可愛くって、ついキスをしたくなったんだ。
君は頬を真っ赤にする。
寒空に薄着で飛び出したような君だから。
暖かい上着を華奢な肩にかけるように。
僕が、君を幸せにしたい。
誰よりも傍にいて、目には見えない涙を拭ってあげたい。
誰にも譲れない願いだった。
それぐらい君のことが好きなんだ。
君は不思議そうに僕を見る。
優しくされることに不慣れな顔をする。
遠く離れた実家から電話が着た。
『できるだけ早く帰ってきてほしい。スーツも持ってきてほしい』と留守電話に用件が残っていた。
上京してから実家とは疎遠になった。
仕事が忙しくて、盆暮れ正月も顔を出していない。
新幹線に乗りながら、嫌な予感がして胸がもやもやとする。
考えすぎだといい
外に出たことのない少女は神の化身だという。
少なくとも同胞は疑ってはいない。
細々と世話をする。
少女は苦労のない生活を送っている。
ただ一つ、外に出られないこと以外。
監禁している少女は神の化身なのか、そう思っていたいのか、分からなくなる。
ただ平伏し、神の化身の少女の声を聞く。
母が作ってくれた卵焼きは太陽のようだった。
同じ手順で作ってみたけれども舌は正直だ。
どれだけなぞっても、あの日出された卵焼きには敵わない。
夕ご飯に出る卵焼きは、それだけ特別だったのだ。
もう食べられないと思うと切なくなる。
いつの日か、母が作ってくれたような卵焼きを食べたい。
出会ったばかりだというのに、懐かしさがこみあげてきた。
一目惚れとはこういう感情なのだろうか。
ずっと前から知っているような気がした。
生命の鼓動が鳴る前に、すでに出会っていたような気がする。
君は泣きそうになりながら、僕の指を指先でつつく。
言葉を惜しむ仕草まで初めてではない。
「一度、水族館に行ってみたいです」わがままを言わない少女が言った。
「じゃあ、これから行くか」青年は言った。
「いいんですか?こんな突然なのに」少女は俯いた。
「家事をしてくれるお礼だ」青年は言う。
たくさん魚を泳ぐ姿を見て少女は目をキラキラさせる。
「おいしそう、と思ったか?」
朝3時。
新聞が届けられる時間だった。
受験勉強をしていた時から、新聞受けから新聞をダイニングに運ぶのが日課だった。
その日は空っぽの新聞受けに出会った。
バイクが走ってくる。
慌てて新聞を入れた男性にハートを盗まれた。
一目惚れだった。
連絡先を訊こうと心が押す。
言葉を交わしたい。
ずっと好きだった。
きっと鼓動が止まる瞬間まで連れていく感情だと思っていた。
想いを伝えることはないだろうと、ぼんやりと考えていた。
あなたの重荷にはなりたくない。
言葉にしたら、あなたは途惑うだろう。
だから、この気持ちは秘めたまま一生付き合っていく。
それが唯一できることだった。
「好きです。付き合ってください」と見知らぬ女子に言われた。
好かれるのは嫌じゃなかったし女子は可愛かった。
付き合っている相手もいなかったから「いいよ」と二つ返事をした。
「本当ですか?」女子は目をキラキラと輝かせた。
それも過去のこと。
「だってこんなの、愛じゃない」彼女は言う
「いただきます」箸をそろえて拝むように言う。
「どうぞ、召し上がれ」と返ってくる言葉はない。
完全な独り言だった。
朝ごはんのメニューは雑穀米と豆腐とわかめの味噌汁とひじきの煮物とほうれん草のお浸しと焼き鮭だ。
毎朝、出されていたメニューだ。
ただ味の方は毎朝のものとは違った。
カタンッと音がした。
俺は目覚める。
カタンッ?
充電中のスマホで時刻を確認すると、真夜中の2時。
丑三つ時だった。
冗談はこれぐらいにしてくれ。
今時、怪談話なんて流行らない。
二度寝を決めこもうとしたが足音が近づく。
薄暗がりで見ると幼馴染がいた。
彼女は無理矢理、両手をぎゅっと握る