『君が好き』
今日も伝えられなかった。
たぶん明日も伝えることができないだろう。
想いが溢れかえっているから。
どこから話し始めればいいのか分からないから。
だから、上手に伝えることができない。
物語の主人公のように『恋』をすらすらと囁ければいいのに。
口下手な僕にはできそうにない。
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泣いて泣いて泣き暮れているうちに、朝がやってきた。
どうして静かな夜のままでいてくれないのだろう。
また泣いた。
それでも空を明るくしていく太陽を見ていたら、涙は止まった。
誰かに泣いていたことを知られたくなかったから。
次の夜が来るまで、泣くのはお預けだ。
作り笑いを浮かべる。
「ありがとう」あなたは言葉を惜しまない。
嬉しいことがあれば嬉しいと言う。
楽しいことがあれば楽しいと言う。
「愛している」幸せそうにあなたは言う。
あなたが愛してくれるからではない。
あくまで僕が、あなたを愛していたいんです。
僕の悲しみを。
僕の苦しみを。
救ってくれたあなただから
神剣・神楽の巫女だったとはいえ、できることは少ない。
特に青年に同胞殺しの妖刀を押しつけてからは見守ることしかできない。
せめて、日常だけは心地よさを保ちたいと思う。
率先して家事を行った。
生活に無頓着だった青年に感謝されるが、感謝するのはこちらの方だ。
少女は毎日が幸せだ。
連続して葬儀が営まれた。
君は涙を耐える。
本当は棺桶にすがりついて、大泣きしたいことだろう。
けれども残された家臣たちの前でそれは許されなかった。
後継ぎとしての期待に応えなければならなかった。
だから、いつもよりも背をピンと伸ばして、堂々と喪主を務める。
そんな君が悲しそうだ。
「これは吊革に届かないだけだから」と電車内で君は言い出した。
「別に貴方のことを頼っているわけじゃないのよ」君は言い訳を続ける。
目を逸らしつつ、僕の腕にしがみつく。
本当は手を繋ぐタイミングを探しているだけだと僕は知っている。
そんな君が可愛くて、思わず笑顔になってしまう。
生命を賭けても守る。
あなたはそれを、恋といった。
それでは片恋だ。
決しても両想いにならない。
そんな切ないことがあって良いのだろうか。
あなたは頑固だから考えを譲ることはないのだろうな。
分かっていた。
それでも、もっと幸せな恋がしたいと思った。
どうすれば、待っているのだろうか。
屋台巡りをして、かき氷ばかり食べている少年が心配になった。
正確には、その舌が。
かき氷を制覇した少年は大口を開けて笑った。
少女は頭が痛くなった。
心配は的中した。
少年の舌は形容がしがたい色に染まっていた。
かき氷のシロップのせいだろう。
それを指摘すると、少年はなおも笑った。
泡沫のように生まれては消える戦乱の世の中だ。
そこで生まれたことに後悔はない。
生命が軽々しく扱われることに不満に思ったことはない。
ただ、唯一と思った姫君が哀れだった。
今日も名を呼ばれ反射的に笑顔を作った。
どこまで守ると心の中で誓う。
命を賭しても。
それほど貴重な笑顔だった。
可愛いものは全て妹のものだった。
背が高く、ニキビだらけの自分のものではなかった。
妹は可愛かった。
誰もが笑顔になるような存在だった。
もちろん自慢の妹だった。
でも、一つぐらい可愛いものが欲しかった。
似合わないくせにね。
視線に気がついたのだろうか。
「お姉ちゃん。あげようか?」
あの日から良く眠れない。
眠ったとしても、浅い眠りだった。
今日もうつらうつらを繰り返して朝が来た。
遠い目をしながら、支度をする。
腕時計のベルトを巻く。
そこで、時が止まっているっことに気がつく。
秒針が動いていなかった。
「お前まで寿命か」独り言を呟く。
独りになってしまった。
君の優しさに思わず涙が零れた夜。
君は何も言わずに僕の背を撫でてくれたね。
溢れかえった想いは、とても綺麗なものじゃなかったけれども、君は黙っていてくれた。
それが僕にとって、どれだけの救いになったのか。
君は知らないだろうし、これから先、教えるつもりもない。
たった一夜のこと。
見えなかった優しさ。
届かなかったぬくもり。
そんなものを抱えながら僕は今日も君のいない世界を生きている。
後悔しない夜はない。
どうしてあの時、君の手をつかめなかったのだろう。
今と違う未来が待っていたはずだ。
僕は今日も君と出会った場所に立つ。
もう一度、初めからやり直したくて。
「好きだよ」僕は思っていることを言った。
「うすっぺらい愛の言葉なんていらないの」と君は言った。
大きな瞳は凪いでいた。
信用していない目だった。
「僕の愛は真実だよ」僕は伝える。
「誰にでも同じ言葉を言うのでしょ?」君は冷たく言った。
ため息混じりの言葉は切なかった。
「本気だよ」
たった一瞬、腕がふれあった。
それだけだ。
それなのに心臓は早鐘を打つ。
君が好きだと告げる。
僕は君を見つめる。
君は不思議そうに「どうしたの?」と尋ねる。
恋をしているのは僕だけのようだ。
それがとてつもりなく寂しく、胸に穴が開いたようだった。
どうすれば君にこの想いが伝わるだろう