二人にとっての記念日だから奮発した。
付き合い始めて一年。
たくさん喧嘩もしたし、たくさん笑いあった。
これからもずっと一緒にいたい。
そう思えるのは君だけだ。
電車を乗り継いでホテルまでやってきた。
ビュッフェ形式だから、と思ったが緊張してきた。
君がさりげなく、腕をぎゅっと握る。
「好きだ」と告白した。
それに頷いてくれた。
晴れてお付き合いを始めたのだが距離感がつかめない。
女の子と付き合うのは、これが初めてだ。
一緒に帰るのにも緊張して無言になってしまう。
手すら繋がないのは恋人といえるのだろうか。
どうすれば距離を詰めることができるのだろう。
君はスマホ片手に近づいてくる。
僕の隣に座って、液晶画面を見せる。
「見て見て。うちの子可愛いでしょ」三毛猫がタオルの上でくつろいでいるフォトを見せられた。
僕もスマホを取り出してフォトを探す。
渾身の一枚を君に見せる。
「うちの子だって可愛いよ」僕の言葉に、君は微笑みを零す。
ようやく一緒に帰れるようになった帰り道。
君は「私たち、付き合っているって噂があるんだけど」不満そうに言った。
その言葉に心はズタボロになる。
「噂だよ。そのうち誰も言わなくなるよ」僕は精一杯の虚勢を張る。
「付き合っていないのに。告白してくれてもいいと思わない?」君は言う。
路地裏に身を隠す。
暗がりの中で僕は君を抱きしめる。
けたたましい足音は去っていった。
僕は安堵して、君を見る。
君は上目遣いで、僕の手のひらに指を絡める。
まるで逃避行をする恋人同士のようだった。
君は照れもせずに僕を見つめる。
僕は唾を嚥下する。
「もう大丈夫だよ」と僕は声を潜めた
少女は勢いよく、背中に抱きついてきた。
「構え!構え!構え!!」雲雀のように澄んだ声が言う。
最近、忙しくて一緒にいる時間が減っていた。
寂しい思いをさせていたのだろうか。
腰に回された手に、青年は手を重ねる。
「今日は暇だから、君の好きなことをしよう」青年は言った。
「本当!?」
せっかくのデートだというのに、僕は寝坊した。
LINEに遅刻することを送ったが既読はついたものの返事はなかった。
待ち合わせ場所が見えてきた。
僕は君のところまで一直線に走って「ゴメン」と謝った。
君は怒り顔で、両手をぎゅっと握る。
そして「ずるい」と言う。
「許すしかないじゃん」
僕は君に恋をした。
君のことを想うと、どれだけ駄目人間だったか分かる。
君のように高潔でいられれば、どんなにいいだろうか。
本当は君を甘やかして駄目にしたい。
駄目人間同士なら、こんな悩みを抱えこむことはないだろう。
二人して恋の醜悪さを、恋の愚かさを味わえたのなら最高だと思う。
新品の制服が家に届いた。
私はその箱を抱えて自室に向かう。
部屋着から制服に着替える。
全身鏡の前でポーズをつける。
少しばっかりお姉さんになった気分だ。
これから毎日、着る制服だったけれども心配があった。
たくさんの同じ姿の女の子たちの中で、浮いたりしないだろうか。
可愛いだろうか
僕のハートは盗まれてしまった。
恋に堕ちるなんて、くだらないことはみっともなかった。
そんなダサいことはしたくなかったから、これは恋じゃないと抵抗する。
それも空しく、僕の目は君を追いかける。
花びらが散ったことを憂う君の横顔を見て、心臓は破裂寸前だった。
全部、君が悪いんだ。
誰が言い出したのだろうか。
夜になっても、うだるような暑さに頭を冷やしたくなったのだろう。
肝試しをすることになった。
くじを作って、二人一組になる。
風は意外に涼しく、気分転換になるだろう。
「よろしく」君は恥ずかしそうに、両手のひらに指を絡める。
「怖いの苦手なんだ」君は言った
この頃の天候不順で天気予報が外した。
今日も星空は見られないみたいだ。
それが残念だと、部屋の中から空を見上げた。
歳月の中、君は輝く星になってしまった。
もう手の届くところにはいない。
生前『死んだら星になるの』と言っていた君だ。
きっと全天の中で一番、明るい星になったのだろう。
一位の座は掠め取られた。
今回も白金色の頭髪の少年のものだった。
少女にはそれが悔しかった。
どんなに勉強をしても、少年には勝てない。
廊下に張り出された順位表を見上げながら、少女は拳をぎゅっと握る。
少年は確認するように見上げて立ち去った。
その背中を少女は睨みつけた。
次は勝つ。
夜空に瞬く星は綺麗だった。
文字にしてしまえば陳腐だけれども、見事だった。
キラキラと光る星を見上げていると「綺麗だね」と君は言った。
同じことを考えていたかと思うと、面白い。
僕は心から笑う。
君はきょとんとしていたけれども、答えを教える気はなかった。
二人で見上げる空は綺麗だ。