外は雨が降っているから、トランプで遊んでいた。
先から負け続き。
ポーカーをしていても、七並べをしていても、大貧民をしていても。
「顔に出やすいんだよ」と君が笑う。
最後にじじ抜きをすることになった。
奇跡が起きたのだろうか。
一番に手札がなくなった。
「ざまぁみろ」僕は言い放った。
波打ち際で漂白された枝を拾う。
流木というものだろう。
遥か彼方からやってきた枝には、どんな物語があるのだろうか。
拾ったばかりの枝で砂浜に君の名前を書く。
寄せては返す波に消されてしまうぐらいがちょうどいい。
僕の名前は書けなかった。
海と同じ味の液体を目から滲ませる。
波音を聞く。
面倒なことになった、と青年は思った。
先ほどから少女が無理矢理、胸に腕を触れ合わせる。
意識しなくても、柔らかな感触が腕に触れる。
何度、ためいきを飲みこんだのだろうか。
少女の方は全く意識をしていないから、どう切り出したらいいか困った。
無下に腕を振り払うわけにはいかないだろう。
君は口癖のように「幸せになりたい」と言う。
僕に『幸せにしてほしい』とは言わない。
君は僕をよく知っている。
二人で手を繋いで逃げたところで、現状は変わらない。
君のために幸せを用意してあげたいけれども、僕にはそんな力がなかった。
そして、君は霧のように姿を消した。
呟きが木霊する。
「なんて顔をしているんだい?」できるだけ優しい口調で声をかける。
うずくまって立てない君の横に座る。
僕より小さな体は、僕よりいっぱい痛みを感じるのだろうか。
小さな体をさらに小さくして座る君の頬には涙の跡があった。
目には見えない心の奥は傷だらけだろう。
僕は背中を優しく叩いた。
『サヨナラ』を口にするのは得意だった。
ほんの少し目を細めて、口角を上げる。
それで笑顔の完成だ。
それで『サヨナラ』を言う相手も笑顔になる。
『また、明日』と手を振り、別れ道を進む。
それだけのことだから容易くできた。
今日も夕陽が眩しい。
目に沁みるような光に背を向けた。
僕は笑顔の君が好き。
だから、泣き止んでよ。
その涙が僕のためなのかもしれないけれど。
ちっとも嬉しくない。
君にはいつでも笑っていてほしいんだ。
たとえ、その笑顔が見られない場所に僕がいたとしても。
君の涙が早く枯れるように、僕は君の頭を優しく撫でる。
僕にはこれぐらいしかできない。
白金色の頭髪の少年と同じ空気を吸っている。
そう思っただけでも頭にくる。
少年はこちらのことなんて意識もしていないだろう。
まるで機械のように淡々としている。
もしかしてどこかの科学者が作り出した精巧な機械だと言われる方が納得ができる。
テスト用紙が配られた。
少女は気合を入れる。
公園デートは刺激が少ない。
付き合ったばかりの二人には相応しいのかもしれないけれども。
僕はほんの少しばかり退屈していた。
隣に君がいなければ、ため息の一つでもついていたところだろう。
君が上目遣いで。僕の指先を両手で包む。
「あたたかいね」君は笑う。
暖を取るほど寒くはないはずだ。
ずっと探している。
探しつかれて、妥協したくなる。
答えなんて、初めからないのかもしれない。
たまたまだとか、偶然だとか、そんな回答はぼくが嫌だ。
ぼくたちが恋する理由は、もっと尊いものであってほしい。
それはぼくの我儘かもしれない。
君にとって、どうでもいいことなのかもしれない。
テスト前だというのに、昨夜はついつい夜更かしをしてしまった。
それが試験勉強だったら、少しは意義があったかもしれないけれども。
漫画の続きが気になって最新刊まで読んでしまった。
おかげで寝不足だ。
電車の中でほんの数分の仮眠をとったけれども、寝足りない。
大きなあくびが出た。
「お嬢ちゃん。その杖を貸してくれないかい?」黒衣を纏った貴婦人は言った。
ようやく手に入れた杖だ。
誰にも渡したくない。
「嫌です」と私は抵抗する。
「ほんのちょっと拝借だ」貴婦人は素早く杖を手にする。
力量の差を見せつけられた。
「さぁっとね」貴婦人が杖を振ると、空が虹色になった。
夜が更けたといっても、このご時世だ。
終電はまだ走っている。
酔い覚ましに、駅まで歩いていく。
それに、すっかり出来上がってしまった女子が心配だった。
お待ち帰りは免れたが千鳥足だ。
女子が無理矢理、手のひらを指先でつつく。
「手を繋ぎませんか?」上機嫌の女子は笑う。
溜息をついた。
少女は気になったことを尋ねた。
「どうして普通の生活をしているのですか?」
その問いに青年は「超能力なんて持っていて得があるのかい?客寄せパンダになる」苦笑しながら答えた。
「世界征服も夢じゃないですよ」少女はなお言う。
「普通の暮らしが一番だよ」青年は言った。
少女は納得する。