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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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空調が利きすぎた部屋は涼しいを通り越して寒いぐらいだった。
設定温度は何度になっているのだろうか。
『寒い』と訴えたいぐらいだったけれども、招かれた側だ。
大人しくしてはいなければ。
招いた青年はお茶を持って戻ってきた。
軽々しく、両手を握る。
「冷たいね。寒かっただろう」と言った。
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向日葵がうなだれる時刻。
日ごと短くなっていく昼の時間。
つかんでいた腕が離れた。
少女は向日葵畑の迷路に足を踏みこんだ。
決して消えない痕を手首に残したまま。
隠れ鬼の始まりだ。
少年は少女を探して向日葵畑の中を迷走することになった。
一途に少女を探すのは厄介ごとを忘れさせてくれる。
イブが禁断のリンゴをもいでから、人間は体ひとつで楽園を追放された。
神代の時代から、人間は変わっていない。
愚かで、弱い。
それらを打ち勝つために、ホイッスルと共にプールの中に飛びこむ。
息もできない水の中でタイムを競う。
一秒を争う中で、学校の名前を背負って、必死に泳ぐ。
孤独だ。
射干玉の夜を照らすように桂月が晧く輝いていた。
いちご味のジュースを飲みながら、それを見上げる。
姉媛が空を緩やかに滑り落ち、だいぶ呼吸が楽になった。
それでも汗は拭っても拭っても滴り落ちる。
生温い風に吹かれ、狗尾草が揺れていた。
酷暑の夏もようやく終わろうとしていた。
「皇帝陛下の弟君の正妃にならないかい?」父が持ってきた縁談は破格なものだった。
「いまだに側妃もおらず、独身だ。尊いお方から愛されたいと思わないかい?」
返事をしなかったから、乗り気に見えなかったのだろう。
皇帝陛下には男の後継ぎがいない。
そのため弟君は独身を貫いていると聞く。
私は生まれつき魂の色が見える。
正確には、その人が思っていることが色として判別できる。
あまり嬉しくない能力だった。
人の内側を覗くというのはプライバシーに反する。
見たくもない色もある。
その中、いつも緑色の幼馴染は貴重な存在だった。
いつ見ても緑色。
安寧と平和の色に私は微笑む。
夕暮れは別れの時間だ。
手を伸ばそうと思えば手を伸ばせる。
そんな距離にいる少女の手をつかむことが、今日もできなかった。
「さようなら」と少女は笑顔で、別れの挨拶をする。
少年はぎこちなく笑顔を作り、自分の両手を軽く握る。
一秒、一瞬でも、少女を引きとめたい。
わがままを防ぐように。
「その口で何人の女を口説いたの?」踏みこんではいけない言葉を言ってしまった。
気まずい沈黙が落ちる。
けれども、どうしても『ごめんなさい』が言えなかった。
ただの八つ当たりだと分かっている。
「君を大切にしたいんだ。これまでの女性とは違って」彼は困ったように微笑んで言った。
彼は華やかな噂がある男性だった。
美しい容貌に、すらりと伸びた背、洗練された立ち振る舞い、誰にでも優しい。
モテるのも当たり前だった。
でもそれらは本心を隠して身につけたものだと、どれほどの人間がわかるだろうか。
彼が柔和に笑う度に、私には小さな子どもが泣いているように見えた。
流れ星がたくさん流れると聞いて青年は望遠鏡を引っ張り出した。
埃をかぶったシートから取り出す。
今までだったら興味がなかっただろう。
少女の喜ぶ顔を見たい。
そう思うようになった。
少女が青年を変える。
これからも共にいたいと思う。
そのためには同胞殺しを躊躇してはいけない。
決心する。
寝台の横たわった少女を見届ける。
「ねえ、お願いがあるの」少女は少年の瞳を見つめる。
「私がすっかり眠ってしまえるまで、手を繋いでいてくれる?」少女がおねだりする。
「他の人には頼んじゃダメですよ」少年は恥ずかしそうに、両手を触れ合わせる。
ほっそりとした手に性差を感じた。
夜闇の中、手を繋いで歩いた。
爪月はとうに沈んでいるので、灯りは星々だけだった。
並んで歩いていた足音が一つ消えた。
少女は不審に思って振り返ると、唇を重ねられた。
少女は大きな瞳をさらに大きくした。
「忘れて、なんて残酷だね」唇を塞いだ少年が言った。
少女の胸に灯火が灯った。
今年は夏が短かった。
すでに立秋も過ぎるとそれが顕著だった。
日中の暑さは辟易するが、長々しき尾のように夜が長くなるのは大歓迎だった。
月が晧く、美しく見える。
星空が地上に囁いているように聴こえる。
射干玉色を背景に月と星が躍るさまを見るのは楽しかった。
それがひとときのものでも。
掛け時計が決まった数だけ音を鳴らす。
世界が朝になったことを知らせる。
遅れて携帯電話のアラームが鳴る。
液晶画面を押す。
アラームが鳴り終わるのと掛け時計の音が鳴り終わるのは同時だった。
起き上がらなければ、今日も一日忙しい。
微睡の中でやることリストを考える。
二度寝しそうだった。
少女は怒り顔で、少年と繋いでいる手の手のひらを折れんばかりに握る。
それで少年は反省したどころか、嬉しそうな顔をした。
「これはただの旅行じゃないのよ」少女は少年を見上げる。
「視察だろ?」少年は答えた。
「だったら、どうしてふらふらとあちらこちらを立ち寄るの!」少女は怒鳴った。
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プロフィール
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iotu(そら)
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自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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