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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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これから竜神様と初夜を迎える。震えが止まらない。泣きそうになりながら、手のひらをぎゅっと握る。
竜神様に生贄になった娘は、初夜を迎えると食べられると村の皆は囁いていた。
けれども生贄を出さなければならないほど、田畑は荒れていた。守ってくれる両親のいない娘だった。
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高校時代の友だちからメールが着た。珍しいことだと思って、メールを開いた。
そこには恩師が亡くなったことを淡々とつづる文章が書いてあった。
上京してからも毎年のように年賀状をくれた恩師だ。
狼狽しながら、スーツをクローゼットから引っ張り出す。眠れない夜になりそうだ。
夢を見ているのだろうか。動物の耳をはやした紳士が黄昏時に笑っていた。
紳士はシルクハットを取ると「落とし穴にご注意を」と告げた。思わずきょろきょろと辺りを見渡した。
落とし穴らしいものはなかった。
「目には見えませよ」紳士は内緒話をするかのように囁いて、一礼をした。
焚き木の中に新聞紙を放りこむ。めらめらと音を立てて新聞紙は燃え上がった。
いつまでも取っておいても意味がない。そう言い聞かせて、紙が灰になるまで見送った。
何でもない振りをして、心で泣く。あの人の名前が載っていた新聞紙が燃えるさまは、哀しかった。
愛おしかったんだ。
私を振って、選んだ相手のことなんて知りたくない。それなのに噂話が耳に入ってくる。
作り笑いを浮かべて『お似合いだね』と私は言う。精一杯の強がりだ。
おしゃべり雀はどこにでもいるようで、私が振られたということを甲高く囀る。
涙をこらえて『縁がなかったんだよ』と言う。
僕は一生、恋をしない。恋なんてできない性格だと思っていた。
他人と肌をふれあわせるのも、他人と会話をするのも苦手だった。
だから、君が僕の世界に飛びこんできた時は、とっても驚いた。
僕の心のスペースにいつの間にか入りこんで、僕を振り回した。気がつけば僕は君に恋した。
お気に入りの靴下が見つからない。しぶしぶ箪笥から、夏の靴下を出してきた。
麻の靴下は涼しすぎて震える。この季節には相応しくない。それでも仕方なく出勤した。
昼休みに起毛の靴下を買いに出かけよう。そう思いながら、仕事をしていた。
昼前に君からメールが着た。忘れ物、と。
君と並ぶぐらい大人になったら、君との関係が変わると思っていた。
早く大人になって、君の隣を歩きたかった。けれども大人になったら、君は離れていった。
僕と君を繋いでいたものは何だったのだろう。君と離れても、答えは見つからない。
こんなことなら、大人になりたくなかった。
iotuは、祈るような気持ちで最後の嘘をつきました。
それは歩き出すための嘘でした。
「君の全部を忘れたいんだ」、と。
君は何も知らないままでいて。

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僕は、祈るような気持ちで最後の嘘をついた。
神様の前に立ったように、嘘をつくというのに清々しい気持ちだった。それは歩き出すための嘘だった。
「君の全部を忘れたいんだ」と僕は言った。君は大きな瞳が涙で潤む。僕が歩く道に連れてはいけない。
君は何も知らないままでいて。
楽観的な君と悲観的な僕。いつだって最悪な結果を考えてしまう僕に、君は抵抗する。
明るく、朗らかな君に、僕は遠い目をしてしまう。
どうしたらこんなにも違う考えを持つ君に惹かれてしまうのだろうか。恋とは不思議なものだ。
いつかやってくるだろう別れに僕は静かに目を伏せた。
部屋の片隅に置かれた写真立て。あなたと最後に撮った写真が入っている。
もう会えない、遠くに行ってしまったあなたと未練がましい私が仲良く写っている写真だ。
机の上に飾ることはなく、部屋の片隅に伏せておいてある。そんな写真に価値があるのだろうか。
それでも捨てられない。
iotuは、無意識に緊張しながら最後の嘘をつきました。
それは前へ進むための嘘でした。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」、と。
・・・どうしようもないな。

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僕は、無意識に緊張しながら最後の嘘をついた。それは前へ進むための嘘だった。
「すぐに追いつくから、先に行ってて」と僕は言った。君は気に取られたのだろう。
何度も振り返り、僕を確認しながら、未来に向かって走っていく。
それを見ながら・・・どうしようもないな。と思った。
当番のお風呂掃除をしていた。タイルを磨いていると、泡で足を取られた。
つるっと滑って、派手な音を立ててしりもちをついた。その際、派手の音を立てた。
音を聞きつけたのだろう。「大丈夫か?」と兄が顔を出した。
それから、兄は手を差し出した。仕方なく、両手をぎゅっと握る。
「大切な話があるんだ」と君は言った。部屋は白尽くめ、天井まで白い。その白さよりも、白い顔の君。
一定の電子音がする部屋に、君はたった一人だった。
僕という存在がなければ、君は認知されないようだった。
「明日死ぬんだってさ、その前に結婚したかったと思ったんだ」と言う。
暖房の効いた部屋で僕と君はアイスを食べる。冬の贅沢だった。
「アイスのない世界があったら嫌だな」と君はアイスをかじる。
「アイスが食べられるようになったのは、近代からだよ」と僕は覚えたての知識を告げる。
「誰の受け売り?」と君はきゃらきゃらと笑う。僕はそれに傷つく。
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プロフィール
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iotu(そら)
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性別:
非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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