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ついったーでポストした創作文芸系のlog。 中の人の都合でUPされないlogもあります
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「いつから嘘だってわかってた?」と君は尋ねた。
僕は少しばかり間を置いてから「最初から」と白状した。「そっか」と君は俯いた。
それきり言葉は出てこなくて、二人の間に沈黙が落ちてきた。
「嘘でもいいと思っていたんだ」と僕は泣きそうなくらい痛々しい気持ちで、君に伝えた。
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僕は黄緑色が印象的な童話集を朗読した。すると傍らにいた君は僕を睨みつける。
「子ども騙しの話は結構」と拗ねたように言う。
「じゃあ、大人の君は添い寝はいらないね」と僕が言うと、天邪鬼な君は抱きついてきた。
「独りだと凍えるじゃない」と君は視線を逸らしたまま言った。
君は「さようなら」と小さな声で言った。二人並んで帰る帰り道で。
ちょうど十字路で、いつものように言った。けれども、繋いだ手は離さない。
この別れを惜しんでくれているのだと、納得した。だから僕は、君の手を握り返した。
「もう少しだけ、いいかな?」と僕が言うと君は笑う。
iotuは、幼子を慰めるかのように最後の嘘をつきました。
それは前へ進むための嘘でした。
「すべて夢でも構わない」、と。
君は何も知らないままでいて。

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僕は、幼子を慰めるように最後の噓をついた。それは前へ進むための嘘だった。
昨日という過去を振り切って、今日という日に別れ、明日という前を向くための嘘だった。
「すべては夢でも構わない」と、誓いを立てるように宣言した。君は目を半ば伏せた。
君は何も知れないままでいて。
君は恥ずかしそうに、僕の両手のひらを指先でつつく。まるで暗号のように、くりかえす。
言葉にするのは恥ずかしいのだろう。何度も君の指先が囁く。
規則性のあるつつき方に僕はようやく気がつく。モールス信号だ。危機一髪、僕は気がついた。
君が何度も『愛している』とつついた。
「誕生日、おめでとう」と貴方は真っ赤な薔薇と白い百合が鮮やかな花束を差し出した。
それに私はクスリッと笑ってしまった。「花は嫌いですか?」貴方は困ったように言う。
「祝われる私よりも、祝ってくれる貴方が嬉しそうだから」と私は言った。
「生まれてきたことを祝う日です」
僕は、近づいてきた足音に、背伸びをして会釈をした。教本で勉強をしたように、ちゃんとできたはずだ。
すると会釈を返された。この場合、どうすればいいのだろうか。僕が迷っている間に、男性は遠ざかる。
それを見送りながら僕にはまだ背伸びだったな、と感じた。次は上手くやる。
スマホの液晶画面には、笑顔の君。
クリスマスを一緒に過ごせなかったから、寂しい思いを感じさせてしまったかもしれない。
そう思ったのは、僕の杞憂だったようだ。友だちたちとケーキを囲む、君は元気そうだ。
生クリームを頬につけたフォトを見て僕はどうにかやっていけそうだよ。
iotuは、情けなく笑って最後の嘘をつきました。
それは相手を楽にするための嘘でした。
「怖いものなんてないよ」、と。
こんなことしか言えないなんて。

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僕は、情けなく笑って最後の噓をついた。
まるで笑っているような、泣いているような顔をしかできなかった。
それは相手を楽にするための嘘だった。「怖いものなんてないよ」と、僕は言う。
君を安心させたくって、ついた最後の嘘だった。それなのに、こんなことしか言えないなんて。
僕は、久しぶりのデートが楽しみで、待ち合わせの時間よりも早く辿り着いてしまった。
すると、すでに君がいた。僕に大きく手を振る。君も楽しみにしてくれていたのだろうか。
意外に似た者カップルだな、と僕は思った。君は満面の笑みを浮かべて、僕の両手を軽く握る。
「冷たいね」
まだ外は紫色の明け方。下級武士である青年は起きる。これから戦が始まるのだ。
鎧を身に着ける前に、朝餉の準備をする。火の入っていない厨は、衣一枚では寒すぎる。
どこかに器量の良い娘はいないのか、と考えてしまう。
そうすればこの寒さを乗り越えていけるのではないかと思う。
目を開けても真っ暗闇だった。夢の続きを見ているのだろうか。隣には穏やかなぬくもり。
手探りでスマホを探す。
冷え切った金属を指紋認証すると、まだ明け方にも程遠い時刻が液晶画面に表示される。
君を待っている間に眠ってしまったようだ。まだ夢の中にいる君に「おかえり」と。
ソファの上には愛猫と男性が座っていた。外は寒かっただろうと女性はホットココアを入れた。
マグカップを二つ持って、ソファの上に座る。
まるでそれが不満だというように、愛猫は泣き顔で、女性の手のひらに爪を立てる。
ココアを受け取った男性は「気難しがり屋なんだ」と言った。
恋に恋するお年頃。夢の中の微睡みで、少女は少年に告げる。
「この世界で二人きりになれたらいいのにね」少女は笑った。
「今でも充分、二人きりだよ」少年は繋いでていた手に力をこめる。
痛くない程度に、辛くない程度に、寂しくない程度に。少女は弾かれたように少年を見つめた。
クローゼットからリクルートスーツを取り出す。この前、着たのは3年前だろうか。
今の職場にわずかな不満があった。それが積もり積み重なって、転職をすることになった。
仲良かった同期も就職先を探しているという。無事に面接をして、契約を交わした。
来年度からは新しい職場だ。
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プロフィール
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iotu(そら)
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非公開
自己紹介:
iotuは五百箇という意味の古語から。
オリジナル小説サイト「紅の空」では、「並木空」というHNで活動中。
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