8時28分ホームルーム間近の教室の俺の机の上は自称異世界人に占拠されていた。
どよめく教室もなんのその、見た目だけは愛らしいそいつは俺の平穏を打ち砕くために口を開くのだ。
「あなたと私は運命共同体! 喜びなさい地平人」
何故、日本語なのだろうかと尋ねてはいけない。それがやつらのやり方なのだ。
「シティセスめ! ――くんが貴様の契約を受けるいれると思っているの!?」
何故か俺の隣の席の女子生徒が叫びだしたが、やはり無視。春になると出てくるのは虫だけではない。
それに彼女はもともとそういった性格だった。
あれはまだ俺が5歳だった頃まで遡る……暇はないので、省略。
自称異世界人と敵対しているらしい女子生徒の会話は絶好調だ。
俺は自分の座席に座りたいだけなんだが、割って入るのも憚られる。
女性の会話に割り込んで無傷にいられるのはイケメンと先生だけだろう。残念ながら俺はどちらにも該当しない。
「――、机に座っている女性は君の知り合いか?」
いつの間にか教室に入っていた担任が笑顔で俺に尋ねてきた。
「いいえ、赤の他人です」
俺は答えた。
言い終わる前に、自称異世界人と隣の席の女子が怒鳴り始めた。
俺の弁解は担任には届かなかったようだ。仕方がない。
「――、あとで職員室で話を聞こう」
担任は笑顔のまま言った。
……俺は平穏を愛している。
こんな日常はもう嫌だ。
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