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 市場では様々な物が売られている。
 最も人気で最も品数が多いのは「記憶」だ。
 誰でも簡単に用意できるし、同じ物が二つとして存在しない。
 元手がかからず、コレクターのおかげで売れ残るという心配もない。
 その手軽さから市場デビューに最適なアイテムとして雑誌で特集されているほどだ。

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 大人気の「記憶」だが、最近は盗品も多い。
 代理販売が多い市場だけに、買った「記憶」が正規のルートのものか、どうか、の判断は難しい。
 不幸の「記憶」が安値だった場合、疑う必要がある。
 もっとも、手元に置きたくないから二束三文で売り払う人物もいるので一概には言えない。

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 「記憶」を財布に優しく、安全に楽しむなら、眠っているときに見るほうの「夢」が良い。
 毎晩、生産されるものだから供給も安定しているし、万が一、盗品だった場合も心が痛まない。
 「夢」を100個失ったとしても、性格が変わることはない。

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 「記憶」は手にとってその感触を楽しむのも良いし、耳にあて音色を聴くのも良いし、ちょっとしたインテリアとして棚の上に飾るのも良い。
 標本のようにガラスケースに並べるのも良いし、ペーパーウェイトのようにテーブルに置くのも良い。

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 鑑賞するだけでは物足りなくなったら、加工するという選択がある。
 原石にはない輝きが生まれ、新しい魅力に気がつくだろう。
 「記憶」の加工方法は星の数ほど存在するが、一定の人気を得ているのは万華鏡だろう。

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 万華鏡の楽しみはセル作りだ。
 もちろん磨いただけの「記憶」を万華鏡のセルにすることもできるし、「記憶」を損ねないからビギナーにもお勧めだ。
 大きくなりがちなのが欠点だが、筒にこだわることができるから、楽しみの広がりは無限大だ。

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 「記憶」を砕き、ガラスの小瓶に入れる。
 特殊なオイルのなかで舞う「記憶」はそれだけでも美しく、サイズの揃った小瓶が並んでいるのも華やかな魅力がある。
 気に入った小瓶をセットして筒で覗く。
 万華鏡になった「記憶」は、それまでにはない魅力に溢れている。
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