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「 140文字の物語 」
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 その閉鎖空間に閉じ込められたと気がついたのは、目の前に青年が現れてからだった。
 行く手を阻む青年は何がおかしいのか笑い転げている。
 この閉鎖空間からの脱出は容易ではないことだけはわかり、背中に汗がつーっと伝った。
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 掃除中に一枚のCDが出てきた。
 忘れられたCDは、初めての音を歌っていた。
 宝物だったはずなのに忘れていた。
 後頭部を殴られた気分だった。
 CDの中の歌声は変わらずに「ここにいるよ」と歌っていた。
 曲はその時の気持ちをそのまま保存してくれていた。
 私は懐かしいと思った。
-
 パリンッと大切なものが音を立てて崩れ割れた。
 大切に大切に手に包んでいたから、私の両手は小さな傷ができて血がにじんでいる。大切にしすぎて壊れてしまった小さな世界。
 最小世界は元の形には戻せない。
 じくじく痛む傷がそれを教えてくれる。
 後悔の痛みは鈍い痛みだった。
 枕元に一冊の本を置く。
 まだ半分以上白紙の本だ。
 その本は朝、読み返す用の本だ。
 不思議な本で、眠っている間に見る夢が綴られている。
 シンデレラが硝子の靴をはいて竜退治に出たりとしっちゃかめっちゃかな物語を聞かせてくれる。
 それが楽しみで毎晩、枕元に白紙の本を置く。
 行く手を阻む千年王国への扉。
 「ここで終わりか」頑張った自分を褒めるのか、諦めてしまう自分に呆れるのか。
 どちらも嫌だと扉に押す。
 辺り一帯に轟く音。
 扉は開いてしまった。
 扉の前で足踏みしていた時間をあざ笑うかのように。
 進むしかない道が続いている。
 私は一歩、踏みだした。
-
 君の嫌いな言葉集めて、放り投げてしまおう。
 切っ先が鋭くて柔らかい肌を傷つけるかもしれない。
 じくじくと血がにじんで今よりも酷い格好になるだろう。
 それでも言葉の破片は止むことはない。
 キラキラと断片に悲しい過去が映りながら、君のしたに降り注ぐだろう。
 それが言葉の禊。
 俯くと谷間があり、一瞬で目が覚めてしまうような、遥か彼方に谷底が見える。
 そんな不毛の大地にも「昔むかし」で始まる物語がある。
 あれは今日のような夜に聴くのに相応しい。
 夕暮れの中、人影が突き立てられたビルのように並んでいる。
 その中、ひときわ背高のっぽの人影が愛おしい。
 そのお隣にはちんまりとした私の影がようやく並ぶ。
 自然に並ぶの大変な分だけ、こうやって影が並んで歩いているのを見るのが、嬉しい。
 私よりも影同士のほうが仲が良くっても
-
 優しさが痛みになるというのならば、痛みは悼みとなるのだろう。
 君よ。さあ、悼みを乗り越えて、世界へ向かえ。
 この悼みを知らぬ者たちのために、腕を差し伸べるために。
 君よ。さあ、旅立つ準備を。
 世界のどこかで優しさを探している者たちのために。
 鍵穴を破る。
 カチッと鍵を回せばいいだけ作業が終わらない。
 いや終われない。
 君の心を守る錠前だから。
 「泣かないで、怖がらないで」と言っても君は首を横に振るだけ、鍵はピクリとも動かない。
 「泣かないで」
 と君は僕の頬にふれた。
 「怖がっているのは貴方でしょ。私は大丈夫」笑う
 バサッ。
 空を見上げたら白鳥がすごい速度で飛んでいく。
 青に映える。
 彼らはどこへいくのだろうか。
 あいにく私はそれを知らない。
 目的地が決まっている渡り鳥の力強い羽ばたきの音が地面に降ってくる。
 私も私自身の目的地を決めなければいけない。
 そう思った日曜日の昼下がり。
 彼が背負うものは、彼の人生の中ではという表現が必要だが、未だかつてないほどの重みのあるものだった。
 一歩歩くたび、淀んだ水に波紋ができる。それでも諦めずに歩き続けなければならない。
 それが彼の受けた罰であり、幸福なのだから。
 彼女を守るために彼は歩き続ける。
 名の無い墓とも呼べない石に手向けの花を置く。
 かつての英雄が眠っている地としてはうら寂しい景色だ。
 風の精霊が私の肩で「これこそ彼が望んだことなのよ」と囁いたような、そんな気がした。
 それならば、この墓標ですらない土地を讃える詩を考えなければならないな。と私は思った。
 義理の姉に買い物を頼まれた帰り道のことだった。
 道路が奇妙に捩れて見えてきて、そこを兎が跳ねていくような音が重なるように畳み掛けるように聞こえてきた。
 振り返ってはいけない。
 それだけはわかったから不自然にならないほどの早足で長い捻じれた道路を一人、歩く。
 幼児を抱きかかえて、天体観測。
 今日は金星の食が行われる。
 いつもの場所に双眼鏡持って言ったら「息子さん?」とわざとらしく仲間に言われる。
 年齢的に子どもがいてもおかしくはないけれど「甥っ子です」とキッパリと否定しておいた。
 金星はヴィーナスなのにな、ご利益が欲しいよ。
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