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「 140文字の物語 」
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 夜になるとすーっと影は離れていく。
 夜闇に紛れて影は歌い、踊り、遊ぶ。
 朝日が昇るまでの影たちの祭りは毎夜、静かに始まって静かに終わる。
 彼らは音を持たぬのだから当然、歌に声はなく、踊りに物音は立たない。
 朝日が昇ればまた静かに主たちの元へと帰る。
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 私の言葉など届かなくても良いのです。
 私が存在した証明などいらないのです。
 私がいたということは「私」が知っているのですから、それだけで十分なのです。
 あなたが私を知らなくても、私が望んで、それゆえ餓えてしまったことなど知らなくて良いのです。
 どうか静かな眠りに。
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 「幸せはどこにあるの?」と無邪気に君が問う。
 答えられずにいると、「ここだよ」と君が抱きついてきた。
 どうやら二人の間にあるらしい。
 僕の頬が思わずゆるんだ。
 確かに幸せはここにあるらしい。
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 「寂しいの」と言ったら「寂しかったんだ」と返ってくる。
 「泣きたかったの」と言ったら「泣きたかったんだ」と返ってくる。
 合わせ鏡のような私と貴方。
 でも鏡だから反射しても、ふれあえない。
 どれだけ私の気持ちを分かってくれる貴方でも、私を抱きしめることは永遠にできない。
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 あの日出した答えはベストではなかった。
 もっと時間をかけて答えを出すべきだった。
 でも二人の間には時間が残されていなかったのも事実だ。
 蝋燭が最後まで美しく溶けられないように、僕と君の間もいびつな形で冷たく固まった。
 僕は「答え」を見るたびに後悔のため息を一つつく。
 境界へ飛び込む。
 一人ぼっちの昨日までとは、永久にサヨナラだ。
 愛刀が答える。
 これからは心躍る戦いが待っている。
 それを考えるだけで心音は早くなる。
 もうすぐ境界を抜ける。
 一人ぼっちではなくなるんだ。
 殺し続けることが正義の世界へ、愛刀だけを連れて行く。
 耳がトタン屋根を叩く音を拾った。
 この世界では雨は無差別に降る。
 カーテンを開き、窓を開ける。手の平で雨の感覚を確かめる。
 冷たい。
 雨はこれから強くなるだろう。
 何事もなかったように窓を閉じ、カーテンを閉める。
 耳だけで雨のリズムを楽しむ。トタン屋根のドラムマーチを。
 彼女は亡国の歴史が綴られた一冊の本をいつまでも大切にしている。
 ページをめくってもその国はすでに滅んでいるというのに。
 新しいことは何一つない。
 痛みをやり過ごすにしてもつたないやり方だと彼も思った。
 それでも彼女は亡国の歴史を綴った本をくりかえし読む。
 一人分のお茶は意識しないですむから楽。
 二人分のお茶は意識するから大変。
 お茶にこだわりがあるあの人が「美味しいです」と言ってくれるか、緊張しながらティーカップをあの人の前に置く。
 緊張はクライマックス。
「今日のお茶も美味しいですね」
 あの人が微笑む。
 もう会えないあなたの名前を思い出したら、あの時の好きという気持ちも思い出して、涙がボロボロこぼれた。
「最近、涙腺ゆるいなぁ」と自笑して、あなたの名前を想い出として仕舞う準備をする。
 こぼれる涙を手の平でぬぐった。
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 静かな静かな夜でした。
 胸の奥に灯った恋心がちりちりと燃える音が耳に響くほど静かな夜でした。
 あの人を想って息が詰まる、そんな所作まで音になるような静かな静かな夜でした。
 愉快そうに笑う唇を睨むと髪を梳かれる。
 着物を焚きしめられている香りが鼻をくすぐる。
「ここにいるよ」と唇は紡ぐ。
 子ども扱いされたような気がして、さらに睨む。
 香りが深くなってまなじりに口づけされ、頬に、鼻に、やがて唇に。
 不満顔が崩れてしまった。
 ずるいと思った。
 昼の公園のベンチに座って真昼の月を見つめる彼女の横顔を僕は見つめる。
 ふいに彼女がこちらを見たから、慌てて缶コーヒーを飲む。
 彼女の横顔を眺めていたなんておくびも出さずに。
 真白い真昼の月は彼女に良く似ている。
 つかめそうでつかめない。
 ひっそりと輝いているところとか。
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 ぽつんぽつんと落ちているキラキラとした硝子球。
 キラキラ光るそれで道ができている。
 私は一個ずつそれを拾い集めて、太陽に透かしてみたり、手の平で転がしてみたり、つるっとした表面にキスをしたり。
 最後のひとつを拾ったら貴方と会った。
 「初めまして」
 初めてな気がしないけど。
 「離して!」彼女の言葉に反応して掴んだ右手をより強く握り、笑う。
 彼女の瞳の中に嘲笑する自分が映った。
 少女は空いた左手で殴りかかるが、弱々しいもので、彼は首を傾けるだけで避けた。
 このままでは終われない、どちらかが納得するまで続く拷問なのだから。
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