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「 140文字の物語 」
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ペールギュントの『朝』を弾く少女は輝いて見えた。
迷いのない運指。
情感のこもった演奏だった。
もっと詳しく見たくなり、サングラスを外した。
世界は目が痛くなるほど眩い光にあふれていた。
刺激を受けて反射的に涙が零れる。
目を瞬かせて光に慣らさせる。
少女の演奏を見守る。
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砂の祭壇の上には生贄の少女が一人。
祭壇を覆うように燃える木々が置かれている。
そのうちの一つが弾ける。
少女は柱に縛り付けられていて逃げようがなかった。
少女が死を覚悟した時、滝のような雨が降りだした。
少年が祭壇に上がった。
少女を解放する。
「もう大丈夫だ」と言った。
庭伝いに幼なじみの部屋に訪れる。
掃き出し窓の鍵は開いていた。
音をたてないように気をつけて開く。
幼なじみの部屋はひっそりとしていた。
主が不在だからだ。
畳の部屋に上がって、文机に一輪挿しを置く。
綻び始めた梅を一枝、飾る。
心が浮き立つ。
幼なじみも喜んでくれるだろうか。
空はブルーからレッドへと変化し始めた。
晴れの日なら見られる天候の変化だ。
365日、正しく太陽は沈んでいく。
白夜の国に行かない限り、毎日見られるものだった。
窓ガラスいっぱい使って最後の光を投げかける太陽を見つめていた。
ふいに目が霞む。
違う。
頬を伝う感触が知らせる。
天窓の硝子を見上げる。
そこには偽りの青空が今日も広がっていた。
この温室のような空間では必要な時しか、雨が降らない。
それを知っていてもつい見上げてしまう。
晴れ以外の天気を硝子越しに見られないのかと。
同じように閉じ込められている少女が腕を掴む。
「やめて」少女は言った
病室は空調が利きすぎて暑かった。
窓の外では季節外れのミゾレが降っているというのに。
コートを脱ぎ、テーブルの上に置いた。
「来てくれてありがとう」ベットの上に横たわったまま彼女は言った。
彼女は起き上がり、満面の笑みを浮かべながら、俺の手のひらを両手で包む。
神殿に百日通った。
願い事は決まって同じ。
今年こそは豊穣でありますようにと。それだけを無心に祈った。
百日目の夜、化身が現れて実りの約束をしてくれた。
化身が手のひらに触れた。
わずかな痛みが走る。
まるで火傷をしたかのようだった。
化身は霧散した。
手のひらには刻印が残った
半透明の翅を持った蝶々が目の前を通り過ぎた。
蝶々は万年筆の上で翅を休める。
左手で目をこすると、蝶々は四散した。
白昼夢だったらしい。
目の前の原稿がちっとも進まないため脳が現実逃避を始めたようだった。
短歌をあと五首、作らなければならない。
今の不思議体験でも書こうか。
百年の眠りが終わろうとしていた。
繭玉の向こうから「出ておいで」と声をかけられている。
ゆっくりと瞼を開くと、繭はすんなりと解れていった。
私は目覚める。
目の前には瓜二つの子らがいた。
当代の巫女殿は双子であらせられるようだ。
大きな瞳が私を見つめる。
私は笑顔を作った。
猫も恋する春である。
俺にもとうとう春がやってきた。
彼女は春そのものだった。
彼女の声はいつでも澄んでいて、明るい話題ばかりだった。
こちらの仕事に合わせてくれる。
彼女が満面の笑みを浮かべながら、両手を握り締める。
「久しぶりのデートです!楽しみましょう」彼女は言った。
彼女の大きな目が瞬いた。
溜まっていた雫が涙に変わった瞬間だった。
初めて見る彼女の泣き顔だった。
ただ静かに涙を零す。
どうしてそれを拭ってやれなかったのだろうか。
手を伸ばせば届く距離にいたのに、泣く彼女を見つめ続けていた。
励ます資格がないと勝手に決めつけていた。
夜中に目を覚ました。
つい先刻まで見ていた夢があまりにもリアルだったので、起きた実感がなかなか湧いてこない。
夢の中では幼なじみと縁側でアイスを食べていた。
初夏のような日差しの日だった。
けれども記憶が夢を否定する。
初夏のように暑い日はあったが幼なじみには会っていない
たったひとつ掛け違えただけなのに、すれ違ってしまう。
本当は好きなのに「嫌い」なんて最低の言葉を言ってしまった。
もう取り返しがつかない。
自分の中でも、ぐしゃぐしゃな感情を解って欲しいというのは甘い考えだと解っている。
好きな物ほど反比例してしまう自分を何とかしたい。
私は追われていた。
一族の宝ともいえる神剣を持ち出したのだから当然だった。
神楽を扱える人間が持つべきだと思ったから、私はその人物の胸に飛び込んだ。
寝癖のついた黒髪の青年は、中途半端に伸びた髪をヘアゴムで結ぶと神楽を抜刀した。
追手から守ってくれた。
命の恩人だ。
彼は端正な顔立ちをしているから、視線を集める。
モデルをしていてもおかしくはないほど、均整がとれたボディと雰囲気を持っていた。
その彼が薔薇の花束を抱えていれば、衆目の視線を独り占めしてもおかしくはない。
目立つことはやめてとあれだけ言ったのに、懲りていないようだ。
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