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「 140文字の物語 」
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資格を取るために勉強中の彼の横顔をじーっと見る。
集中しているせいか、それともこちらを無視しているのか。
視線は絡み合わない。
ちょっと色の浅い虹彩に見つめられると、今でもドキリっとするのに。
一生懸命な姿はカッコいいけれども、私は楽しくない。
教本を取り上げた。
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今日は良いお天気だった。
石造りの要塞は暑いくらいだった。
屋上にシーツを干す。
このお天気なら半日で乾くだろう。
白いシーツが風に吹かれ広がっていく様は、鳥が羽ばたくようで美しかった。
汗をかいてしまったので、お風呂に向かう。
この時間なら空いている。
湯船に飛びこんだ。
揺らめく蜜蝋の中、束ねられた鍵の音が響く。
自分の前で音が止まった。
少女は口ずさむのをやめた。
鍵穴が開けられた。
檻から出された。
売られるのだと少女は気づいた。
少女を買った主は、少女を抱き上げる。
「どうして私を買ったの?」と少女は尋ねた。
「歌が聞こえたからさ」
日差しが眩しい。
体温よりも熱い空気にふらつきそうになる。
風鈴の音がどこか懐かしい。
麦わら帽子をかぶった君が振り返る。
差し出された手にそっと、指先を握り締めた。
ヒンヤリとした体温に、ドキッとする。
海まであと少しだ。
アスファルトに焼かれながら、手を繋いで歩む。
鏡に映したようにそっくりな姉妹だった。
親さえ取り違えることがあった。
別々の高校に進学して、たまに交替をしていた。
同級生たちは気がつかない。
それが面白くて夢中になった。
交替した日の夜は、どんなことがあったかの報告会だった。
夜遅くまで会話は途切れない。
刺激的だった。
テレビをBGMにボールペンを走らせていた。
明日には提出しなければならない書類だ。
見やすい文字で書こうとすると、手が震える。
書き上げなければならないという使命感だけで書類に向かっている。
手の震えは止まらなくなってきた。
私はボールペンを握り締める。
書かなければ。
少女は静かに眠っていた。
胸が規則正しく上下していなければ、人形のようだった。
真っ白なワンピースからのぞく肢体は、陶磁器に薔薇の花弁をのせたように美しかった。
遠慮がちに、指を両手で包む。
少年の体温よりもわずかに低い体温が心地よかった。
眠る少女の横顔をじっと見つめる
街を歩いても誰も振りかえらない。
手を繋いで歩いていても、好奇な視線を浴びない。
やっと普通の恋人同士になれたんだ。
私の背が彼の肩をちょっと越すぐらいまで伸びたおかげだ。
歳の差は埋められないけれども、他は埋められることに気がついた。
堂々と街中を歩けるのが嬉しい。
深紅の酒の入ったグラスを透かして、シャンデリアを見る。
乱反射した光が眩い。
一口飲むと、テーブルに戻す。
「何か、ありましたか?」給仕が訊いてきた。
給仕の存在を忘れていた。
召使いというものは気づかない存在であるのが正しいので、落ち度ではない。
遠い目をしたまま首を振る
今夜は新月だったか、と帰り道を歩く。
ポツンポツンと立つ街灯だけが頼りの帰路は、心細い。
急ぎ足で帰り、カバンを置くと、台所に立つ。
目玉焼きを焼こうとして、卵をぐしゃりとやってしまった。
殻が混入しまくりだ。
今日は何だかついていない。
誰かのせいにしたいが自己責任だ。
夕方の動物園は閑散としていた。
家族連れとカップルが何組かいるだけだった。
彼女は熱心に動物を見ていた。
目をキラキラさせて子どものように夢中だった。
面白くない俺は脇をくすぐる。
彼女は向き直る。
「つまらない?」と言った。
記憶が呼び出される。
前もこんなことあったな、と。
珍しく熱を出した。
医者を呼びほどではないと判断されて、自室の布団の中に押しこめられた。
風邪薬が効いたのか、目覚めたら夕方になっていた。
トタトタと軽い足音がして障子が開けられた。
音の主は軽々しく、指を指先でなぞる。
「熱、下がったみたいだね」と嬉しそうに言った。
中途半端に伸びた髪をヘアゴムでくくる。
神剣・神楽を抜刀する。
柄はすいつくようにぴったりと手に収まる。
同族殺しの神剣は今日も斬れ味が最高だ。
生温い返り血を浴びる。
こちらも無傷ではいられない。
斬られた箇所が痛む。
命のやりとりをすること自体が気持ち悪いと感じてしまう。
声が途切れた。
振り返るとオートマタが不自然なポーズで止まっていた。
台座についたゼンマイを巻く。
オートマタはまた歌いだした。
精緻に造られたオートマタはまるで人間のようだった。
生命が宿っていないのが不自然なほどに。
人間にはなれないオートマタに同情して、心で泣いた。
霧雨が降る朝だった。
橋でようやく彼女に追いついた。
傘を持たない彼女はずぶ濡れだった。
頬を流れるのは、雨粒か涙か。
雨音が二人の沈黙を埋める。
もう二度と泣かせないと、心の中で誓う。
静かに泣く彼女は痛々しかった。
持ってきた傘を彼女に差しかける。
「ごめん」と僕は謝った。
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