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「 140文字の物語 」
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「昔は良かったなぁ」と煙草をくゆらせながら男は言った。
向かい側でビールを飲んでいた女は「私は今でも充分、楽しいけど」と言った。
「子供時代にしかできないことがあると思ってさ」男は呟くように言った。
「今からでも遅くないんじゃない?」と女が言ったが、男は首を緩く振った
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薔薇の垣根から呻き声が聞こえてきた。
耳を澄まして、声の方向に向かっていく。
垣根が入り組んでいるところに、傷だらけの子猫が一匹。
もがいて薔薇の棘にさらに傷つけられている。
痛がる様子が哀れで、思わず手を伸ばした。
棘で肌が傷ついたが構わない。
子猫を抱き寄せる。
紙切れはどれも同じに見えた。
握られた紙切れを一本引く。
端が赤く塗られていた。
ペナルティだ。
こんだけ人数がいれば当たらないだろうと高をくくっていたが、罰ゲームを受ける一人に当たってしまった。
生ビールのジョッキがすぐさま運び込まれる。
コールを受けながら一気飲みをする
こんなはずではなかったと閉じ篭った部屋の中で思う。
わずかな明かりとりの窓から讃美歌が聞こえてくる。
それは沈んだ気分を癒やしてくれる。
誰が歌っているのか分からないが、美しいソプラノだと思う。
いつまでも聴いていたいと思うが、時間が来れば美しいソプラノは沈黙する。
夕方のレストランは活気にあふれていた。
けれども私はうつむいていた。
向かい側の席に座っている彼はビールを飲んでいた。
沈黙が重かった。
大事な話があるとメールで呼び出された時から、私はうつむきっぱなしだった。
彼はおもむろに鍵をテーブルを置いた。
「合鍵」と短く言った。
下足箱の中に白い封筒が入っていた。
今時、古風な呼び出し方だった。
屋上で待っているという文字は見慣れたものだった。
幼なじみのものだった。
訝しがりながら屋上に上った。
「好きな人が出来たの」と幼なじみは告げた。
俺はそっと、自分の両手のひらをぎゅっと握った。
「そうか」
母からメールが着た。
今すぐ帰ってくるように、と用件のみのメールだった。
地元に帰るための新幹線の切符を買った。
明日が休みで良かった。
姉からもメールが着た。
ブラックスーツを着てくるようにとのお達しだった。
嫌な予感が増していく。
それを振り切るように電車に乗った。
誰だかわからない人たちに追い掛け回された。
鋭い刃物で肌を傷つけられた。
痛みで目を覚ました。
パステルカラーの部屋で起きた。
パジャマが汗で湿っていた。
悪夢だ。
痛みを感じた右手を見ると赤い蚯蚓腫れしていた。
左手でそれを抑える。
二度と見たくないような怖い夢だった。
「連れていって」と少女が囁いた。
背徳感に震えた。
少女は巫女になるために育てられた。
それを連れ出す意味はもう安住地の得られないという同義だった。
植えつけられた義務感との間で揺れる。
気持ちの揺れが終わらない。
少女の双眸に惹きつけられる。
少年は少女の手を取った。
息すら凍る寒さの中で、待たしてしまった。
待ち合わせ場所に走りながら、謝罪の言葉を色々と考えていた。
雪がハラハラと舞い始めた。
待ち合わせ場所にいた彼女は俺を見つけるとふわりと笑った。
その笑顔を見て胸が締め付けられた。
「お待たせ」と言い優しく、両手を両手で包んだ。
部屋に閉じ込められた。
ガチャンと絞められた鍵に抵抗する。
ドンドンと扉を叩く。
「諦めたらどうだい?」と幼なじみが苦笑する。
教科書を差し出してくる。
仲良く勉強をしなさいということだということは分かっている。
赤点すれすれのテストが悪かった。
諦めてシャーペンを手に取った
カレンダーの25日には花丸がついていた。
ベッドの傍には大きな靴下がかけられていた。
玩具を手にした男は赤い服を羽織る。
欲しがっている玩具はずいぶん前にリサーチ済みだ。
朝、起きたら喜ぶ顔を見せてくれるだろう。
男はニコニコしながら、玩具を靴下の中に入れた。
誰も入ってこれないように自室に鍵をかけた。
着なくなった服を透明のビニール袋に詰めていく。
良くも買ったもんだと思うほど袋はすぐにパンパンになる。
クローゼットに掛けてあったコートを手に取る。
着なくても、これは残しておこう。
ふと窓を見やると、夕陽が沈むところだった。
海開きには早いが電車を乗り継いで、海にやってきた。
時刻は黄昏時で人気は少なかった。
地元の人だろうか犬と散歩する姿が黒いシルエットと重なって歩いていた。
彼女は無口なまま恥ずかしそうに、腕を触れ合わせてきた。
しっとりと汗で濡れた肌が吸いつくようで、ドキリとした。
ふわふわの雲はメレンゲで出来ている。
青い空はブルーハワイ味のゼリーで出来ている。
見上げた空は美味しそうなタルト生地で、あれもこれもトッピングしてある。
お煎餅みたいに堅いアスファルトを歩きながら、色々と空想する。
何だかお腹が空いてきた。
早く家につかないかなぁ。
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