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「 140文字の物語 」
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ソファの上に並んで座っていた。
ふと視線に気がついて横を見ると、彼女が上眼遣いで、指先を軽く握ってきた。
ヒンヤリとした指は心地良かった。
「どうしたの?」と俺が訊くと、彼女は「手を繋ぎたくなったの?ダメ?」と可愛らしく訊いてくる。
「全然、OKだよ。むしろ大歓迎だ」
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携帯電話から彼のメールアドレスを削除した。
メールは簡単に繋がるから、忙しい彼の負担になる。
電話番号は消せなかった。
これを消したら二人を繋ぐものがなくなってしまうような気がしたからだ。
今、彼がどうしているか気になる。
メールを打ちそうになる。
消してしまって正解だった
戦は負け戦だった。
砦は無惨に破壊されていく。
敵が迫ってきていた。
少女を逃がすために、少年はその手を取った。
一部の人間にしか知らない抜け道をくぐって、外に出る。
少年は少女に惜別の言葉をかけようとした。
少女は耳を手でふせぎ、首を横に振る。
少年は困ったように微笑んだ。
同族が運営している病院にかかった。
立場は中立。
どちらの怪我も診てくれる。
表向きは一般的な総合病院だった。
昼の病院は混んでいた。
怪我の方は治りつつあるが念のための受診だ。
「今度、置いていったらケーキバイキングですよ」少女は言った。
「分かったよ」と青年は誓う。
目覚めたらあの人はいなかった。
神剣・神楽もなかった。
寝ている間に出かけて行ったんだと分かった。
置いていかれたことにショックを受けていると、玄関が開く音がした。
青年は血まみれになって帰ってきた。
少女は泣きそうになりながら、指先に触れた。
「ただいま」と青年が言った。
神剣・神楽の柄を握る。
同族殺しの魔剣だ。
手放し、脇に置く。
中途半端な長さの髪をヘアゴムで結ぶ。
奥の部屋をちらりと見ると、健やかに眠る少女が見れた。
音をたてないように神剣・神楽をもう一度握る。
決意を新たに闇の中を疾走する。
敵と呼ばなければならない同族の元へと走る。
ゲリラ豪雨なんて最低なモノだと思う。
傘の骨がぽきりっと折れて、使い物にならなくなってしまった。
もともと横殴りの雨で、全身びしょ濡れだった。
傘を畳み雨を体中で受ける。
蒸し暑い曇り空とは違った感触がある。
まるで水の中を泳いでいるような気がする。
雨が肌を流れ気持ちいい
まだ細い腕に黄色の入れ墨を入れていく。
この国では黄色の入れ墨は隷属の証だった。
まだ幼い少女に同情して、入れ墨は小さな花の形を選んだ。
大人でも痛みで泣くのに、幼い少女は泣きもせず、大人しく彫られている。
高貴な出なのだろう。
微笑みすら浮かべている。
職人は心で泣いた。
少女はさりげなく、少年の指先を指先でなぞった。
少年は驚いたように顔を上げて、こちらを見る。
興味を引けたことが嬉しくて少女は笑った。
せっかく庭園が紅に染まったのに、難しい顔をして宙を見ているなんて勿体ない。
一緒に散策している意味がなくなってしまう。
少年ははにかんだ
時計で時間を確かめる。
約束の時間はとうに過ぎていた。
最近、遅刻が目立つ。
彼の中の優先順位では私は何番目なのだろうか。
遅刻の回数が答えのような気がして、じりじりと焦る。
いつでも一番でいたいと思うのは我儘なのだろうか。
走ってくる人影があった。
「ごめん」
「遅いよ」
台所で料理をしていると呻き声が聞こえてきた。
一体、何が起きたのか。
とりあえずコンロの火を消し、包丁をまな板の上に置いた。
リビングで子供がお腹を抱えて痛がっていた。
見ればクッキーのカスが散乱していた。
シリカゲルを千切った後が残っていた。
慌てて子供に近寄った。
過酷な受験戦争の後に待っていたのは、過酷な高校生活だった。
授業に出てもちんぷんかんぷん。
テストの点は当然、赤点だらけ。
板書していると音楽が聞こえてきた。
メリーゴーランドで流れるようなオルゴール音だ。
どこか遠くに行きたいな、と思った。
意識を戻して板書を続ける。
少年はできるだけ優しく、少女の指を軽く握った。
この手を放せばさよならだということは分かっていた。
少女を置いていくのはとても辛いけれども、この別れは必然だった。
「行ってきます」言葉にしたら、少年は悲しくなった。
少女の瞳が大きく揺れたからだ。
涙の粒が浮かんでいた。
今回のテストも白金色の頭髪の少年の勝利だった。
今回も満点だった。
少女はケアレスミスをして次点だった。
あまり嬉しくなかった。
少年が通り過ぎる。
少年の顔には喜びも嬉しさもなく無表情だった。
それが少女を見た瞬間、鮮やかに笑ったような気がした。
少女は少年を睨みつけた。
かつて難攻不落と謳われた要塞も今は無惨な姿をさらしていた。
要塞だった瓦礫の間を巡る。
生存者はいない。
今は沈黙を守るものだけが横たわっているだけだった。
どんな強固な要塞を造っても運用次第では脆く崩れる。
「そろそろ帰りましょう」と供の者が衣を差し出す。
それを羽織る。
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