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「 140文字の物語 」
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彼が優しく、指先を握り締める。
心臓がトクンと跳ねる。
恋人同士になってからずいぶん経つけれども、手を繋ぐ度ときめく。
壊れ物を扱うように慎重に触れてくる彼にドキリとする。
彼の仕草には愛情が込められている。
友達とは違う触れ方に緊張と期待が混ざり合う。
それが胸を鳴らす。
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気がつけば漆黒の夜が訪れていた。
腹の虫が鳴いた。
昼食をとった記憶はある。
そこから飲まず食わずで本を読みふけっていたようだ。
続きが気になって夕食を抜いてもいいかもと不健康な考えが過る。
再度、腹の虫が鳴いた。
諦めて本にしおりを挟む。
展開が読めない本だから気になる。
楽譜の棚を眺めていたら、人情家の男子生徒が解説をしてくれた。
一曲一曲丁寧に解釈まで教えてくれた。
二人で相談して、ようやあく一つを決めた。
クリスマスコンサートで弾く曲だ。
練習室で踊る音符たちを前に気合を入れる。
引っかかる場所を重点的に練習する。
本番が楽しみだ。
起きるのも面倒で、いつまでもベッドの上にいた。
するとドアを開ける音がした。上体を起こすよりも早く、その人物は腹の上にダイブしてきた。
自分に比べたら軽い体重とはいえ、それなりの重みがあった。
安物のベッドがきしむ。
「今日は天気が良いよ!遊びに行こう!」提案された。
今日は贅沢に入浴剤を入れて、湯船に浸かった。
冬も本格的に到来した夜だった。
充分、温まってから風呂から上がる。
眼鏡をかけ、暖房が利いた部屋に戻る。
パジャマの上から着る毛布を羽織る。
しっとりとした手ざわりに思わずうっとりする。
温かさに微笑む。
通販して良かったと思う。
今日も一人。
家の中は風がないだけマシという温度だった。
エアコンのスイッチを入れると荷物を下ろす。
今日も疲れた。
PCを立ち上げ、SNSにログインする。
通信速度がお世辞にも早いとは言えないので、なかなか読み込まない。
今日は何を書こう。
日記を見ながらぼんやりする。
人とは違うというのは人目を引くということを幼いうちに知った。
奇異な目で見られる。
好奇心の塊の人たちにとって、これ以上ないぐらいの話題提供だった。
どうすれば普通でいられるのか、分からなかった。
他人の視線から逃れるように生きてきた。
見守ってくれる両親を恨むこともある
歓喜を表す唇は大きく。
頬には大粒の涙を。
道化師は鏡を見ながら化粧をしていく。
畢竟、化粧とは普段の己とは決別する行為である。
おさまり悪い髪の上に帽子を被れば、皆が知っている道化師になる。
風船を片手に天幕を出る。
空を仰ぐと灰色だった。
一雨来られたら厄介だと思った。
少女は川に入っていく。
普段は激しい流れも、静穏だった。
愛しい女性を抱くように川は少女に優しかった。
少女は徐々に深みに足を運んでいく。
川岸では「許してくれ」と嘆く両親がいた。
彼らは川に近づけない。
そういう決まりなのだ。
肩まで水に浸かった少女は笑む。
もうすぐ嫁ぐ。
朝の音楽室は貸切の楽園だった。
気持ち良くピアノを弾いていたら、ドアを開けられた。
クラスメイトだった。
男子生徒は後ろ手で鍵を閉めた。
防音がなされたことで続きを弾こうとしたら男子生徒は笑った。
「今日は俺の誕生日なんだ」と分かりやすい嘘をつく。
どんな目的があるのだろう
テレビのニュースは暗いものばかりだった。
今日一日を振り返っても、楽しいことなど一つもなかった。
昨日の続きの今日が待っていた。
それを無難にやり過ごしながら、帰宅した。
遅い夕食をとり、つけたテレビが俳優の訃報を告げるものだった。
チャンネルを変えても変わり映えしない。
指輪型にくりぬいたクッキーを左手の薬指にはめてみる。
ピッタリだった。
そのままクッキーにかじりつく。
甘い。
口の中に広がって、ほろりと崩れた。
特等席はまだ空席だ。
いつか本物の指輪が贈られる日が来るのだろうか。
クッキーを電灯にかざす。
仰いだままクッキーを口に運ぶ。
揺らめくランタン。
どこからともなく笛の音が聞こえてくる。
振り向くと道化師と目が会った。
今宵限りの祭りは否応がなく盛り上がっていく。
明日になれば灰色の日常が戻ってくる。
サーカス団の団員に「連れてって」と服の裾を引く。
退屈な平穏に飽き飽きしていたところだった。
生と死が紙一重の場所。
遊び場ではないのに彼女は無邪気に振る舞う。
その背を追い、ハラハラするのが常だった。
夕陽が落ちて、今日を無事に乗り切ったことに感謝する。
天幕に戻ると、彼女が楽しげに近づいてきた。
上目遣いで、両手のひらをぎゅっと握る。
「今日もかっこ良かったよ」
突然、抱きすくめられた。
耳元に囁かれた言葉はチョコレートより甘く、切なかった。
私たちに残された時間はわずかで、終わりが見えていた。
だからいっそう恋の熱は燃え上がった。
ホームに電車が入ってきた。
腰に回っていた腕が離れる。
温もりが遠ざかったことに涙が出そうだった。
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