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「 140文字の物語 」
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仕事の後、一杯ひっかけてから帰宅した。
玄関で妻が出迎えてくれた。
満面の笑みを浮かべながら、指先を折れんばかり握る。
その痛みで思い出す。
今日は結婚記念日だということを。
今の今まですっかり忘れていた。
酔いも醒める。
「ゴメン」
「謝っても遅いんだから」妻の眦には涙が一粒
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「お前はいつでも能天気だな。羨ましいよ」と友人が零した。
「君が気にしすぎなんだよ」と答えておいた。
明るい振りをし続けて十数年。
背負った猫の皮の枚数は数えきれない。
重みで押しつぶされそうになる。
それでも明るく振る舞うことをやめられなかった。
それに誰も気づかない。
電車を乗り継いで、海が見える場所までやってきた。
波打ち際を散策する。
こちらはまだ暖かく、吹く風も柔らかい。
心地良い波音に耳を傾ける。
水平線が見えるのが珍しく、今日が特別な日なのだということを知らせる。
恐る恐る、彼女の指先に指を絡める。
小さな手がぎゅっと握り返す。
彼女が先ほどからずっとだんまりを決めこんでいる。
それもそのはず。
ふわふわの綿飴にかぶりついているのだ。
あまり甘い物が好きではない彼女にしては珍しいことだった。
とても嬉しそうな顔で食べているから、こちらかも話しかけづらい。
無難に食べ終わるまで見守ることにした。
「たくさん星が見えます」と少女は言った。
夜空に向けた望遠鏡を覗きながら感激をあらわにする。
青年は裸眼で星空を見上げた。
星はまばらでオリオン座や北斗七星といった有名どころしか見えなかった。
「望遠鏡で覗いてみてください」少女は楽しげに言った。
ちらりと覗くと満天の星空
天体観測をしてみたい、と少女が言った。
中途半端に伸びた髪をヘアゴムで結び、納屋に行ってみた。
埃をかぶった望遠鏡が隅に押しやられていた。
使えるかどうか分からないが、とりあえず庭に出した。
少女の瞳がきらきらと輝いた。
望遠鏡の掃除は少女に任せる。
青年は風呂に向かった。
テストの点数に一喜一憂するほど、少女は弱い。
満点の答案じゃなければ勝てないから、より点数に固執した。
今日も廊下に貼り出された順位表に、溜息を喉で殺した。
白金色の頭髪の少年と目が会った。
興味なさそうにその場を立ち去る姿が憎たらしかった。
彼がいる限り一位は取れない。
最低気温がマイナスを下回るようになって久しい。
インフルエンザの流行が宣言されたのも、記憶に新しい。
電車の中でマスクをしている人も珍しくなくなった。
私の住んでいる地域よりも、もっと北の国では雪が吹雪いているという。
ネットでしか知らない彼は元気でやっているだろうか。
「どの入浴剤、入れる?」楽しそうに入浴剤の袋を振る妹。
難しい選択だった。
どれも魅力的なのだ。
「腰に効くやつかな?」と私が伝えると「分かった」と妹は姿を消す。
風呂場から湯船に湯をためる音が聞こえてきた。
どうやら今日は一番風呂に入れるようだ。
風呂に入る準備を始めた。
仕事が終わって、馴染みの居酒屋に連れ立って入店した。
コートを脱ぎながら「とりあえず生中で」と注文する。
メニューを見ながら、運ばれてきた生中で乾杯する。
「今日は奢りなんでしょ」嬉しそうに彼女は言った。
生中を水のようにごくごくと飲む。
こんなことで幸福になるなんて安い
「今日は買い物に付き合って」彼女からおねだりされることは珍しかったので、頷いた。
女性でいっぱいの雑貨屋に入店した。
男性客はいないのかとそわそわした。
華やかな空気の中、彼女はマグカップを差し出した。
「どうかな?」色違いのお揃いのマグカップに「いいんじゃないかな?」
漆黒の闇が二人を隠す。
音をたてないように気をつけて坂道を下る。
少年は少女の手をぎゅっと握りしめる。
疲れているだろうに。
少女は弱音一つ吐かない。
この手が握り締めた先には運命が待っている。
不思議と命が惜しいとは思わなかった。
少年は心の底から誓う。
少女を守り通すと。
少女は貼り出されたテストの結果に、納得できない顔をしていた。
どれだけ努力しても万年2位という結果は、少女に歪んだ劣等感を植えつけるのに適していた。
天才と秀才の差を見せつけられた少女の瞳には負けん気が映し出される。
次こそはと意思を固めて、その場から立ち去った。
空に瞬く星を無視して、手元を見る。
まるで星を閉じ込めたような光を放つランタンがあった。
満月であることに感謝しながら、道を歩く。
大切な物を落としてきてしまった。
それを拾いに夜道を逆走する。
ゆらゆら揺れるランタンの光を頼りに、落し物を探す。
どこで落としたのだろうか。
音もなく降る雪に目を輝かして、少女は外を飛び出した。
雪がめったに降らない地域で生まれ育てば自然な行動だった。
少年は少女のマフラーとコートを持って、後に従った。
白い雲に覆われた空から、粉雪が舞う。
「積もるかしら?」少女の肩にコートを滑らせる。
「積もるといいですね」
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