テーブルの上に置かれた手に目をやる。
さりげなく、指に指を絡める。
いつもそしていたように。
彼は手を振りほどかなかった。
二つの体温が混じりあって居心地の良さを作り出す。
けれども、これで最後だ。
二人にはどうしようもないような圧力がかけられている。
別れがただ悲しかった。
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真面目な性格が災いして、ホワイトデーのプレゼントで悩んでいた。
相手は義理チョコのつもりだったのだろうけど、嬉しかったからお礼をしたかった。
売り場にはどれもこれも魅力的な菓子が並んでいた。
普段、その手の物を口にしないからどれを選べばいいのか分からない。
冷たい北風が窓を叩く。
啓蟄も過ぎたのに、天気は一向に春らしくならない。
思わずエアコンのスイッチに手が伸びる。
部屋が暖まるまでの我慢だ。
布団を肩まで引き上げる。
花粉症の人には悪いが、早く春になるといいなぁとぼんやりと思った。
窓を揺らす北風は強いままだ。
テレビのニュースで捨て猫の餌やりが採り上げられていた。
野良猫への責任は元の飼い主にある。
可愛いだけでは飼ってはいけないのだ。
最期を看取るまで、責任を持って飼わなければいけない。
そして、ここに段ボール入られた捨て猫がいた。
迷うことなく拾う。
小さな命を守るために。
タワーから見る夜景は確かに綺麗だった。
少女がはしゃぐ気持ちも分からなくもない。
でも放って置かれている現状は不満だった。
少女はデジカメでパシャパシャと夜景を撮っている。
少年は手すりにもたれかかるように腕を置き、少女が夜景に飽きるのを待つ。
この調子なら永遠に居そうだ
海を見に来たのに、あいにくのお天気だった。
雨合羽を羽織って、海辺を散策する。
強風のため波が荒い。
冷たい空気をもろに受け、少女は痛がる。
それでも少女にとっては初めての海だ。
感慨が深いのだろう。
波打ち際を楽しそうに歩く。
潮風で髪がぼさぼさになるのも気にならないようだ
黄昏がやってくる。
カーテンを閉め青年は横たわる。
少女は静かに眠りを見守った。
程なくして青年は苦しそうに胸をかきむしる。
うなされているのだ。
少女は青年の手を握る。
「大丈夫です。私がここにいます」少女は独り言のように囁く。
青年は額に汗をかきそれでも眠りに就こうとする
そばにいるとほっとした。
異性に対して感じる恐怖感は覚えなかった。
といっても同性に対する感情とは、また違ったものだった。
穏やかそうな微笑みに、守られているような気がしたのだ。
何をしても許される。
そんな感じがした。
二人の関係は変わらずに続くのだという変な確信すらある
掛け時計が時を告げる。
その音を一人静かに聞いていた。
両親はまだ仕事中だ。
一人きりで過ごすのには慣れている。
テレビもつけずに掛け時計の告げる音に目を瞑る。
生まれた時から聞いている音だ。
寂しくはない。
気の置けない友達のようなものだ。
夜が滑り込んできたことを知らせる。
人工光の中で口唇がテラテラと光っていた。
まるで誘うようだ、と思わず口唇を見てしまう。
視線に気づいたのか口唇が笑みの形をとる。
蠱惑的な笑顔に慌てて視線を逸らす。
これ以上、見てはいけない。
蜘蛛の巣に誘われる虫になってしまう。
残っていたコーヒーを飲み干すと、店を出た。
ツイッターに呟くと反応が返ってくる。
独りぼっちじゃないと解る。
それが楽しくて、毎日呟いてしまう。
美味しかったもの、キレイだったもの。
写真をUPするのもの楽しい。
今日あったことをツイッターで呟くのが日課になる。
フォロワーさんの呟きも魅力的だ。
ますます離れられない。
他人は外見から嘲笑する。
田舎者が最先端の流行服に身を固めているのが道化師のように見えるのだろう。
いかにもおのぼりさんといった風情が都会の人たちの笑いの種になるのだろう。
三代住んでようやく身内になるような古典的な街だ。
当然だろう。
今に見ていろと小さく胸の内で囁く。
色とりどりの小箱の中から青色の小箱を選んだ。
開けてみると残念なかけらが入っていた。
元は綺麗な貴石だったのだろう。
粉々に砕けていた。
残念なかけらを一つ取り出す。
太陽に向けるとそれは輝いた。
どんな形であれ、失われないものもある。
それを証明するかのように強く輝いた。
椿の花が落ちた。
一つ二つと音もなく、椿の花が落ちる。
枝に残っている花もいずれは落ちるだろう。
気温が上昇するのに合わせて、花が落ちていく。
今年はまだ帰ってきていないあの人が椿を見ることができるのだろうか。
風に揺れる名残りの椿を見つめる。
枝についた椿は何も語らない。
重い荷物に苦労しながら、坂道を歩く。
この辺は家と家の間隔が離れている。
限られた街灯に不安を感じながら、一人歩く。
椿屋敷で有名な古民家まであとわずかで着く。
椿のシーズンが終わる前に行っておきたかった。
その屋敷には珍しい椿が咲いているという。
是非カメラにおさめたい。