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「 140文字の物語 」
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片付けものをしていたらインスタントカメラが出てきた。
今でも現像ができるのか、試してみたくなった。
月光の中、揺れ動く君を一枚撮ってみた。
突然、シャッターを切った僕に君は怒ったけれども「現像したら見せるよ」と言うと文句は止まった。
写真のできばえが気になるらしい。
僕は苦笑した。
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君はすやすやと眠りについた。
気が張っていたのだろう。
プツンと糸が切れたように、崩れ落ちた。
あれだけ泣いたのに、君の寝息は静かだった。
僕はぎこちなく、君の腕を軽く握る。
このまま寝かしていてあげたいが、縁側は寝るのに適していない。
てこの原理で抱き上げると、布団に連れて行く。
親が決めた婚約者から、ドレスの贈り物が届いた。
真っ赤なドレスは夜会でも映えるだろう。
胸元が大きく開いていて、煽情的だった。
「私に似合うかしら?」不安になり、ドレスを運んできた侍女に零す。
「もちろんですわ。殿下のお見立てなのですから」侍女は笑顔で言った。
それでも心は揺れる。
僕は、落ちているものを拾う。
自分から生みだせなかったから、仕方なく。
他人が捨てていくものを拾って、我慢していた。
ある日、傷だらけの愛を拾う。
さすがに持ち主を探した。
自分だけのものにしてはいけない気がしたから。
心に布を巻いた女性と出会う。
愛を差し出した。
独りが二人になった。
「わー、海が見える」車窓を見ていた少女が歓声を上げる。
海のある県に来たのだから当然な眺めだ。
むしろ、浜辺に行くのだから、海が見えなかったら問題だ。
海が見たい、と駄々をこねる少女と共に電車に揺らること数時間。
もうすぐ目的地だ。
少女は輝く笑顔で軽々しく、手のひらに指を絡める。
「iotuは、目をそらしながら最後の嘘をつきました。
それは自分の幸せのための嘘でした。
「まだ一人で生きていける」、と。
嘘だと言えたら、どんなに。」

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僕は、目をそらしながら最後の嘘をついた。
目を合わせたら、嘘だとバレてしまうような気がしたからだ。
これから、どうしようもない嘘をつく。
それは自分の幸せのための嘘だった。
君のためではない。
「まだ一人で生きていける」と呟くように言った。
嘘だと言えたら、君はどんなに喜ぶだろう。
私は、生まれて初めてお付き合いというものをすることになった。
告白してきた男子に「好きかどうかわからないから」と断った。
それが一度目。
何かある度にその男子は告白してきた。
私は根負けして付き合うことにした。
男性恐怖症の気がある私は、男子が近すぎると怖い、離れていても嫌になる。
花火大会は無観客で行われることになった。
中止されるよりマシだったが、夏の思い出が一つ少なくなった。
打ち上げ花火がよく見える坂道で、君と集合した。
そして、僕はびっくりする。
浴衣姿の君はいつもと違って、熱帯夜を泳ぐ金魚のようだった。
柔らかなオーガンジーの帯がはっきりと見えた。
「本日のラッキーアイテムは黄緑色の靴下」とテレビのキャスターが言ったからではないが、黄緑色の靴下を履いた。
占いはあまり信じない方だ。
単に選ぶのが面倒だったから、理由は深くなくそれだけだ。
笑顔で彼の元に向かう。
彼は深刻な顔をして「別れてほしい」と言った。
心の中で慟哭する。
夏も終わるということで肝試しをすることになった。
近所の墓地まで、懐中電灯一つで一周してくる。
そんな他愛のない遊びだった。
くじを作り、無作為に組み合わせを決めたのに、幼馴染と一緒になった。
二人きりになると、幼馴染は嬉しそうに、両手のひらを指先でつつく。
状況を楽しんでいる。
「iotuは、愛を囁くように優しく最後の嘘をつきました。
それは相手を守るための嘘でした。
「君にもらったものは全部返す」、と。
頼むよ、ごまかされてください。」

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僕は、愛を囁くように優しく最後の嘘をついた。
それは相手を守るための嘘だった。
こんな嘘で君に安寧を与えられるというのなら、いくらでも言える。
「君にもらったものは全部返す」と僕が言うと、君の瞳が揺れる。
思い出までは返せない。
僕はそれを頼りにする。
頼むよ、ごまかされてください。
勝気に見えて弱いところのある少女だった。
いつもは元気に走り回って、ハキハキとものを言う。
だから、少年もケンカをするつもりがなかったのに、口論になることしばしば。
そんな少女が今日は俯いている。
柄にもないけれども心配になった。
本当は少女の弱さを包みこんであげたいと思っていた。
「私たち家族になるのよね」とおっとりと王女が言った。
「そうですよ」家臣の青年は頷いた。
ほっそりとした手を取って、青年は唇を寄せた。
王女は小さく悲鳴を上げた。
隣室に控えていたのだろう。侍女が部屋に入ってきた。
青年は狼狽していると、侍女が睨みつける。
「何があったのですか?」
君が両手を差し出した。
僕は嫌々ながら、君の両手を触れ合わせる。
僕と君の間に大きな輪っかができた。
それが切なくて、悲しくて、ほろ苦くて、僕はすぐさま手を離した。
それなのに君は笑顔のまま、まるでいつも通りに「サヨナラ」と言った。
もう二度と会えないかもしれない別れの場面なのに。
「iotuは、無意識に緊張しながら最後の嘘をつきました。
それは本音とは真逆の嘘でした。
「君を、信じきることができなくてごめん」、と。
もう、覚悟は決めたんだ。」

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僕は、無意識に緊張しながら最後の嘘をついた。
それは本音と真逆の嘘だった。
「君を、信じきることができなくてごめん」と僕は謝った。
今でも君がくれた数々の言葉を信じている。
君がくれた想いの数々を信じている。
でも、もう別れだ。
嘘をつくことで心の整理をする。
もう、覚悟は決めたんだ。
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